時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「パタゴニアの四季」

パタゴニア、特に私の住むエルボルソンでは多くの人が観光関連の仕事で生活して います。冬が長く厳しいので、観光は短い夏が勝負です。
クリスマスから学校の始まる3月までの短い期間に、国内はもとより隣国のチリやヨーロッパから観光客が押し寄せ、エルボ ルソンの町と近郊は人と車とごみと騒音で様変わりします。私はのんびり静かに暮らしたい住人の一人なので、正直この季節はうんざりしています が、観光地なのですから「活気のある季節が来た」と喜ぶべきなのでしょう。
当然ですがこの3ヶ月はすべての料金が上がりますし、移動のための長距離バスや国内航空はかなり前から満席状態です。宿泊 施設も飛込みでは空室なしで難しいときもあります。何とかなるさ・・・と甘く見ないほうが良いかもしれません。
ただ今年はチリの火山噴火でアルゼンチン側に灰が降り、観光客が例年ほど来てい ませんから宿泊は飛び込みでも大丈夫でしょう。移動の場合、陸路は問題ありませんが、飛行機は灰のため突然飛行場閉鎖になったりしますので要 注意です。またガソリンがスタンドに無い時もあります。レンタカー利用の際はガソリンをまめに入れ常にタンクを満タンにしておく方が安全です。
さて、早いものでもう12月です。今年は野の花がいつもより勢いが良い気がします。リンゴもプラムもスモモも果樹 の花はどれも満開でしたし、今はルピナスエニシダライラック、名前も知らない多くの花が色とりどりに鮮やかに咲いています。
パタゴニアの四季はきれいだね。」とある移住者の人に言ったら、「パタゴニア に四季なんてないね。あるのは雨季と乾季だけだ。」と言われ驚いたことがあります。
「本当に四季を感じないの?」と呆れて聞いたら、「自分が生まれた国に比べたら こんなの四季とは言えないね。じゃあ因みに春っていつよ?」と言い返されました。「言っとくけど、自分はあんたよりパタゴニアの地質も植生も 気候も降水量も知っていてパタゴニアの自然に詳しいし、その知識を生かしてパタゴニアの将来を真剣に考えて行動しているつもりだよ。」と言わ れ、確かに私は春の定義が出来ないことに気づきました。地質も花の名前も降水量も気温変化も何も知りません。
でも凍った大地が少しずつ緑に変わっていったり、アンデスから吹く風にやわらか さを感じたり、葉を落としていた木が新芽を出して膨らんでいく様に思えたり、鳥の声がにぎやかに明るく聞こえたり、花が咲いたり、春のきのこ を見つけたり、そんな変化で春を感じています。それは世のため人のためにはならないことで、何の役にも立ちません。でも、植物や鳥の名前を知 らなくても、地質や鉱物を知らなくても、降水量や気温が分からなくても、パタゴニアの四季を綺麗だなあ、と感じる心を大切にしていきたいと 思っています。きっとその心がパタゴニアの将来を思う気持ちにつながっていくんだと思っています。
ところでパタゴニアの四季を感じる私は、パタゴニア観光は真夏より、花の美しい 春11月と12月初旬の今と紅葉の秋4月がお勧めだと思っています。

蛇足ですが、市長が変わり、文化センターが閉鎖。日本語教室、習字教室も終了し なければならなくなりました。その締めくくりとしてみんなの様子を録画 しました。少し長いですが、お時間を見つけ是非ご覧ください。