時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「ご用心」

南米やアルゼンチン旅行の注意事項は、パタゴニアで田舎暮らしをして殆ど旅行に 行かない私よりも、旅行者の方のほうがずっと詳しいでしょう。ですからそういう方面でのお役に立つ情報はありません。かえって私のほうが知り たいくらいです。でも先日とてもアルゼンチンらしい失敗をしたので、何かの参考になればと今回書いてみます。

写真をご覧になってください。これはドアです。あれれ・・・と思われた方はおい ででしょうか?そうです。ドアなんですが、取っ手がはずしてあるんです。
のんきな田舎町だったエルボルソンもここ数年人口が急上昇して、残念なことに治 安は悪化しています。10年前は鉄格子のはまった窓のある家はありませんでしたが、今では無い家の方が珍しくなってきています。幸い私の住む 地区はまだそんな家はありませんが、出かけるときに鍵をかけるようにはなりました。

でも、ドアの取っ手がはずしてある家はまだお目にかかっていません。なぜ取っ手 がないか分かりますか?これ、外からドアが開けられないようになのです。いくら鍵をかけていても取っ手があるとドアを壊して進入しやすいから です。家の中から確認して大丈夫と判断したら中からドアを開けるのです。余談ですが、もし知らない場所を通りかかったら、家のドアを見てくだ さい。取っ手の無い家が多い地区は要注意です。あまり長居しないことをお勧めします。

さて、私は取っ手がないドアというのを最近まで全く知りませんでしたし、そうい う発想がありませんでした。で、今回の失敗はその取っ手にまつわる事です。
自衛のため取っ手をはずしているのとは事情が全く違うのですが、先日町のスー パーでトイレに入った時の事です。トイレのドアが半開きになっていたので、私はそのまま中に入りバタンと閉めました。そして閉めてから気づい たんです。そのドアには取っ手が無いことに。「そんな馬鹿な・・・」と思っても後の祭り。運の悪いことにお客が殆どいない開店時。しかもその トイレは店内から奥まったところにありました。

とりあえず用事を済ませ、なんとか自力で出られないかと試してみましたが無理で した。こうなったら恥も外聞もありません。「出して〜」とドアを中からどんどん叩き続けました。暫くして、かちゃりとドアを開ける音がしまし た。
「ああ、開いた〜。助かった。」と外に出ると、男性の警備員が苦笑いして立って いました。

いくら年を取っていても、こういう場面では恥ずかしいものです。「ありがとう」 とお礼を言って早々にスーパーを出ました。

それ以来私は個室に入る時は、必ず取っ手の確認をします。また余程のことが無い 限り鍵は掛けません。片手でドアを押さえるか、荷物を置いてすぐに開かないようにします。それは掛けた鍵が壊れて開かなくなる可能性も大だか らです。今回の取っ手が無かったのも、ただ単に壊れていただけだったようです。
皆様もくれぐれもご用心を。