時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「アルゼンチンから思うこと」

私はテレビを見ません。家にインターネットは接続されていません。電話もありま せん。
今回の日本の大地震津波関連のニュースは、アルゼンチン国営ラジオ放送だけの 情報で得ています。町や友人の家に行けば、テレビやネットでもっと詳しく映像を見ることができます。でも私はしません。例え映像を見ても、今 の私には寄付をすることも、援助物資をお送りすることも、被災地に駆けつけることも出来ないからです。映画の場面の様に現実を見てしまうこと が耐えられないからです。
パタゴニアに暮らす私は、多くの人から「日本を捨てた」と言われます。仕事でも 留学でもなく、移住者としてパタゴニアに暮らすことは日本を捨てたと人には映るようです。
でも私は日本を捨てたという言葉にとても違和感を覚えます。アルゼンチンに住め ば住むほど、日本の良さ、美しさ、伝統文化の素晴らしさに気づきます。私は今のパタゴニアの暮らしが好きなように、日本も好きです。私が今こ こに居るのは、日本を捨てたのではなく、色んな事を選んで来た結果なのです。
そして私に「自分はあなたの様に日本を見捨てず、日本人として日本で責任をと る。」と面と向かって言った人よりも、日本人を意識し、日本と向き合っていると思うのです。
この一週間、アルゼンチンの友人からお見舞いのメッセージを多数受け取りまし た。郵便局でもスーパーでも、たくさんの方が日本人の私に声をかけて下さいました。ここに暮らす多くの人たちが日本の惨状に心を痛め心配して います。そしてこんな状況の中でも整然と助け合っておられる被災地の方々に感動し応援しています。今回はそれをお伝えしたくて書きました。
遠いパタゴニアに暮らす私たちには何も出来ません。けれども、これから何が出来 るのか?どうしていくべきかをもっと真剣に考え実行して行きたいと思っています。
亡くなった方のご冥福を祈り、一日も早い日本の復興を願っています。