時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「パタゴニアの天然塩」

まだガソリンが安かった頃、私たちは粘土、石など焼き物の材料探しによく内 陸部の乾燥地に行きました。木陰のない荒涼とした風景の旅は決して快適なものではありませんでしたが、興味深い鉱物や植物、僅かですが野 生動物に出会え、エルボルソンとは全く違う顔のパタゴニアを知ることが出来ました。
私個人はここ数年乾燥地には行っていませんが、夫は緑化活動ボランティアの 粘土団子の種まきやツアーガイドで毎年行っています。一口に乾燥地と言っても広大なので目的を決めての旅になります。
今年2月下旬、友人 を案内して「天然塩探しツアー」に夫は出かけました。実は昨年夫が持ち帰った天然塩。粘土と混ざり合ってとても食用にはならず、焼き物の 釉薬に利用していましたが、それを手に取ってみた友人が「これはきめ細かくて美容に良い!(蜂蜜などを混ぜてマッサージに使うそうで す)」とすっかり気に入ったのです。
今回の目的地は塩湖。地図で見るとパタゴニア乾燥地に塩湖はかなりありま す。今回は前回行ったSalina del Molle(モージェ塩湖)。余談ですがモジェと言うのは乾燥地に生える自生のマメ科(?)の棘だらけの灌木 で、固くて薪に良いことから伐られここにはもうほとんど残っていないそうです。
我が家からは寄り道をしながらですが往復700kmの旅です。私は夕食を作って、野天風呂を沸かして皆様のお帰りを待つことにし て、夫と友人たちは早朝に出かけました。
夜、みんな日に焼け砂埃まみれで帰って来ました。夫の話によるとモージェ塩 湖周辺は一変していたそうです。一年の間に乾燥化が驚くほど進み、川が干上がり、草が育たず羊や馬の餓死死体が多く目についたそうです。 塩湖にも結晶の様な固い塩が噴出していて、昨年の様なきめ細かい美容に最適の塩は見つかりませんでした。
でもみんなとても満足していました。暑くて風が強くて砂埃が酷くて、とても きつい旅だったのですが、今まで見たこともない荒涼としたパタゴニアの乾燥地は、ある意味とても新鮮だったようです。そして「温暖化」 「砂漠化」を身を持って体験し、緑化活動の大切さと大変さをしっかり感じてくれました。
パタゴニアの乾燥地は決して自然の美しい風景だと思いませんし、自然条件が 厳しく体力のいる旅です。ですから私たちはあまり案内をしませんでした。でも今回の友人たちの反応をみて、山や湖、滝の案内も良いけれ ど、観光旅行では決して行く事が出来ない乾燥地をもっと案内していくべきだと思いました。ただ、軟弱な私ではとても案内出来ず、結局夫一 人の負担になってしまうんですが・・・。
ところで、今回持ち帰った天然塩。のうじょう真人名物「鱒の炭火焼き」の時 使ったら絶品でした。あまり量がありませんが、この塩で5?くらいの特製味噌は出 来そうです。
友人たちもご満悦で、重いのも苦にせず持ち帰りました。
さて、次回行くときはどんな塩湖になっていることでしょう??