時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「本当に必要な物」

私は便利さとか文明の利器を否定しません。私自身もその恩恵にあずかっていま す。でも自分で出来ないことのみに利用するのが、本当の便利さだと思っています。
日本に居た若いころは、洗濯機、乾燥機、掃除機、レンジ、冷蔵庫、テレビ、電 話・・・そんな物が無い暮らしは想像も出来ませんでした。蛇口をひねるとお湯が出るのは当たり前でしたし、冷凍食品やレトルト食品は大好きな 食べ物でした。物を長く大切に使うことよりも、どんどん使い捨てていく事を楽しんでいました。ですから移住当初はあれも欲しい、これも必要と 日本の家族や友人たちに頼んで、色んな物を送ってもらっていました。
でもパタゴニアで暮らして、自分で作り出す面白さを知り、自然と一緒にいる楽し さや感動が分かると、自分で出来ないことは本当に必要な事ではないのかも?と思うようになり、欲しいものリストは電化製品や化学食品から、日 本ののこぎりや地下足袋、もんぺに変わりました。
電気は必要です。ガソリンやガスも必要です。それを否定したりしません。だから 大切に使いたいと思うのです。有難いと思うのです。
今回の日本の原発事故は心が痛みます。でも、唯一の被爆国日本が、こんなにも原 発を保有していることにいつも疑問を持っていました。もし万が一原子炉に事故があったらどうするんだろう?と怖かったです。
これから私たちはどんな選択をしていくべきでしょうか。タオル一本洗うのに全自 動洗濯機を回す必要があるでしょうか?賞味期限が切れたら捨ててしまう冷凍食品で冷凍庫を一杯にしておく必要があるでしょうか?見てもいない テレビやDVDをつけっぱなしにする必要があるでしょうか?同 じ家にいる人と携帯で話す必要があるでしょうか?自動販売機がそんなにも必要でしょうか?夏にカーデガン、冬に半袖でいる程部屋を温度調整す る必要があるでしょうか?
でも、だからどうすべきだ、と言う気持ちはありません。自分が変わっていけば良 いだけなのです。
私は手洗い洗濯が大好きです。満月の夜の明るさに驚きます。天の川の大きさ美し さに感動します。冬の朝、凍った窓の模様を見るのが楽しみです。水桶に張った氷を割る音が好きです。暑いのは苦手だけど、洗濯物が良く乾く夏 は気持ちいいです。冷ごはんは結構美味しいです。分厚い辞書を引いて分からない言葉を探すのは面白いです。夏、汗をかきながら準備した薪を燃 やすストーブは冬とても暖かいです。ここには他にも沢山の感動があります。
私はそう言う事に気づけて良かったと思っています。そういう暮らしが出来ること にとても感謝しています。