時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「初めての感動」

アルゼンチンの学校は12月初旬が終業、卒業の季節です。そして長い夏休みに入 り3月に新学期が始まります。

子供のいない私たちは、そういった年間行事には無関係で過ごしてきました。終業 式とか新学期は私の中では遠い遠い昔の忘れかけた記憶となっていました。
ところが、今年アルゼンチンで初めて終業の経験をしました。しかも私が先生とし て生徒を送るという、想像もしなかった経験です。

ひょんな縁から日本語をエルボルソンで教え始めて、もうすぐ3年になります。教 育関係なんて日本に居るころから全く無縁の世界。しかも私の性格からいって一番向かない職業だと分かっていました。でも日本語を勉強したいと いう一人の女の子の熱意に負けて、私の出来る範囲でという条件で始めました。

ところが始めて見ると「私の出来る範囲」なんて殆どなく、日本語ってなんて難し い言語なの!どうやって説明したらいいの?と落ち込むことばかりでした。それでもなんとか続けて来られたのは、在亜日本語教育連合会と講習会 で出会った多くの日本語教師の方々のお蔭です。日本語をきちんと教える為には、まだまだまだまだ・・・気が遠くなるほど勉強しなければいけませんが。

市の文化センターの教室を借り授業を始めた当初は、珍しいからか地元のラジオや ケーブルテレビが取材に来て、学習希望者が予想以上にやってきました。この3年 で一回だけの参加者も含めると50人近くが日本語の勉強を しました。でも3か月以上続くことは稀で、いつの間にか居 なくなる・・・また新しく始めたい人が来たから新しく始める・・・という感じで個人レッスン的に続けてきました。
ところが今年3月 から始まった初心者火曜日クラスは辞める人も無く、ほとんど欠席もなく、和気あいあいととても楽しい雰囲気で続きました。たった4人のクラス だったのも楽しく続けられた一因だったかもしれません。

ところが生徒の2人が引っ越しで教室に通えなくなり、11月 一杯で終了という事になりました。そこで修了証を文化センター所長さんの協力を得て作成し、最後の授業で一人一人に手渡しました。

するとみんなが「ありがとう。」「トキコに会えて良かった。」「日本語の勉強は 楽しかった。」と言ってくれたのです。思いがけない言葉に私は胸がいっぱいになりました。

「芽が出た」「花が咲いた」「焼き物に綺麗な色が出た」と農場で感じる感動とは 違った、私の知らなかった感動でした。こんな感動もあるんだと、とても新鮮な気持ちでした。

幾つになっても自分を型にはめないで、自分の可能性を信じていけば、きっと今回 の様に新しい感動に出会えるんだと思いました。
みんな本当にありがとう。

突然だったにもかかわらず、カメラの前で緊張しながらも自己紹介してくれた動画 をアップしました。流れを止めない為にその場で間違いは訂正していません。

今年も残すところあと僅かです。皆様どうか良いお年をお迎えください。
そして2011年 もどうかよろしくお願いします。