時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「夢」

2011年、明けまし ておめでとうございます。本年も皆様にとって楽しい年となります様に。そしてパタゴニア便りもよろしくお願いします。
ここパタゴニアではクリスマスが一年の一大イベントで、元旦は西暦が変わる 祝日という程度のものでしかありません。私たちも特別な事はしません。それでも元旦はやっぱり「年が改まったんだなあ。」と気持ちが引き 締まります。今回は私がお正月に思ったことを書いてみます。
昨年は晩春に大雪が降り果樹の花が落ちてしまい、果実の収穫がありませんで した。けれども今年はリンゴもすもももプラムも枝が折れそうな程実をつけています。今はびっしり実ったサクランボが赤く色づいています。 このサクランボ、実は小さいですがとても甘くて美味しいのです。以前は梯子をかけて実を収穫していましたが、今年は手の届く低い場所の実 だけをもいで、その場で口に入れているだけです。大きく育ったサクランボの木に、真っ赤な丸い実が鈴なりについているのは、とてもかわい い風景です。「おいしそう!」と食べたい気持ちはありますが、梯子をかけてまで収穫しようと思えなくなりました。きっと真っ赤な実を見て いるだけで幸せで美味しい気持ちになれるほど、今までこの実を食べてきたからでしょう。それに私の「夢」の一つに「のうじょう真人を中心 に周りが野鳥の楽園になる」という項目があるからです。
太陽を一杯浴びて赤く熟した実は、小鳥がやってきて上手に加えて運んで行き ます。小鳥たちはそうしてあちこちにサクランボの種を播いてくれているのです。実際「えっ!こんなところにサクランボの苗木がある!」と 嬉しい発見が毎年あります。あと数年後、数十年後にはそんな苗木たちが実をつけてくれ、その実を求めてきっとたくさんの野鳥たちがやって 来るでしょう。
人口増加と環境汚染でしょうか、かつて農場で見られた野鴨も、ふくろうも、 野生のオウムも会えなくなりました。アカゲラの数も驚くほど減りました。名も知らない野鳥たちの数と種類も確実に減っています。だから私 はもう一度鳥たちが安心して暮らせる森を育てて行きたいのです。のうじょう真人はたった5・5ヘクタールの 農場ですが、私たちが今ここで始めれば、きっと周りにそれは大きく広がっていくと信じています。木や草や大地にはその力があると思うので す。
一粒のサクランボの力は小さいかもしれないけど、一羽の小鳥の力は小さいか もしれないけど、一本のサクランボの木の力は小さいかもしれないけど、日本人のおばさんの力なんて殆どないんだけど、それでも、その小さ な力が集まれば、いつか絶対大きな力になってみんなの楽園が戻ってくると信じられるのです。真っ赤に色づいたサクランボの実は、私に楽し い楽しい「夢」を見させてくれます。そして「夢」は絶対に実現するものなのです。
その夢の実現に向かう過程に参加できる私はとても幸せです。
2011年も素晴らし い年となりそうです。