時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「国立自然公園ロスアレルセス」


パタゴニアに住もうと決めた時、私達は住んでいたブエノスアイレス州のネコチアという町から今は亡き愛犬「チョリ」を連れ、キャンプ、自炊しながらの旅で大西洋沿いを南下、エスケルに辿り着きました。誰一人知った人もおらず、来たことも無かったパタゴニアなので、取りあえず家を借りて腰を落ち着け土地探しをしようと考えていました。

ところが、私達の予算内ではアパートはあるのですが、犬連れで暮らせる家は見つかりませんでした。ネコチアにはチョリと仲良しの野良猫がいて、その猫も絶対連れて来るつもりだったので、小さくても庭付きの一軒家が必要でした。仕方がないので、バリローチェに向けアンデス沿いを北上していくことにしました。そしてエスケルを出て最初に行ったのがチョリラという小さな村でした。15年前のチョリラはとてもとてもとても小さな村で、現在の様に観光地開発されることなんて想像もつきませんでした。

愛犬と良く似た名前と山間の静かな村で気に入ったのですが、売りに出されていたのは何百ヘクタールという広大な土地ばかりで、私達ではとても手が出ません。ですからさらに北上を続け、エルボルソンにやっと小さな庭付き借家を見つけたのです。

エルボルソンマジン地区に土地を見つけ引っ越し、ここでの暮らしにも慣れた頃、私達は思い出のチョリラに出掛けました。エルボルソンからは約110km、国道から外れるとそこからは砂利道が続きます。その時は町中には行かず手前を右に曲がり、国立自然公園ロスアレルセスに向かいました。

車一台が通れるだけの細い凸凹の土道。深い森の中からは湖が見え隠れします。

車の中でがたがた揺れながら、湖の深い緑色と、森の緑に感激していました。

ここ数年のパタゴニア観光ブーム。不便で美しかったこの国立公園も、ご多分に漏れず国内外から多くの観光客が訪れるようになりました。森の中の道は二車線に広がり、キャンプ場や展望台があちこちにできました。道路を舗装する準備も進められています。私はその変化を素直に喜べないでいました。

そして、今年の夏、そのロスアレルセス国立公園の一部が山火事で燃えました。7000haと想像を絶する面積が焼けました。放火が原因でした。

森は、湖は、山は、何時だって私達を受け止め、優しい素直な気持ちにさせてくれます。

その自然に対して私達はこんな酷い仕打ちしか出来ないのでしょうか?

必ず森が復活すると信じて、私は私に出来ることを考え続けていかなければと思っています。