時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「静かなマンソ川」

nojomallin2008-03-02

スペイン語でマンソ(Manso)は「おとなしい、穏やかな」という意味があります。
エルボルソンからバリローチェ方面に国道40号を進み、国境警備隊の検問所を過ぎると直ぐにマンソ村へ向かう砂利道が左に現れます。ここから約35km進むと深く澄んだ緑色のマンソ川に突き当たり、そこにはあまり広くは有りませんが水浴の出来る川辺もあります。川には大きな吊り橋架かり対岸の森にも行けますし、アサード専門のレストランや公衆トイレもあります。
この吊り橋が出来るまでは、広大な土地に羊や牛を放牧して半自給自足をする電気もない小さなのどかな部落でした。
ところが近年の「パタゴニア観光ブーム」から、マンソ川もにわかに注目を浴び、吊り橋が架かった事で一気に「観光地」に変貌して行きました。ただ交通の便が悪く、道も舗装では無いため、今はまだエルボルソンやラゴプエロの様な人でごった返す場所にはなっていません。
マンソ(穏やか)という名前を持ってはいますが、川幅が広く流れも結構急です。夏はラフティング観光も行っています。
私達は夏の観光シーズンに訪れた事はありませんが、春と秋には時々訪れます。ごうごうと流れる川の音、風にそよぐ森の木々、吊り橋から覗くと泳ぐニジマスの姿も見ることが出来、乾燥気味のマジン村にはないしっとりとした空気に包まれ心が落ち着きます。
ただこの川に着くまでの土地は、マンソ川の支流は流れてはいますが、放牧地のため年々乾燥化が進んでいるように思えます。キャンプ場開発などでこれからはもっとこの乾燥化に拍車がかかる様な気がします。
マンソ川に案内すると、誰もが途中の放牧地よりも、行き着いた川の色と流れと周りの森に感動してくれます。つまり人は自然の一部なのです。流れる水や自然の木々の緑、砂浜や土道が必要なのです。
これからもここは毎年訪れる観光客が増えるでしょう。でも、その為に道をアスファルトに変えたり、森を切り開いてキャンプ場を増やしたりしないで欲しいと願うのは私のエゴでしょうか?
川や森は人を優しく包んで呉れます。だから私達も自分の便利さよりもその自然に感謝して、決して自然に手を着けず、そっと自然に抱かれる心地よさを感じていたいと思うのです。