時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「町に住む鳥、バンドウリア」


自然の残るパタゴニアとか、自然の美しいパタゴニアとか言われますが、住んでいると植物でも昆虫でも野生動物でも野鳥でも魚でも、日本に比べるとその種類の少なさに驚かされます。ですから野生動物を見かけるととても嬉しく「頑張ってね」と声を掛けずにはいられない気持ちになります。

エルボルソンの町に行くと、私はいつも野鳥のバンドウリアを探します。

この鳥は、時々私の住むマジン地区にもやって来ますが、寒すぎるのかあまり見かけません。でもエルボルソンの町ではよく見かけます。

体は大きく、長い嘴が特徴です。性格はとても大人しく、人を嚇したり襲ったりしません。

車の多いメイン通り中央分離帯の芝生の所にもいますし、写真の様に道路をよちよち歩いていたりします。

普段はつがいの2羽でいることが多いですが、秋の麦の収穫期などには集団で刈り取り後にいて落ち穂をついばんでいたりして、大きな鳥が集団でいる景色はなかなか壮観です。

町の中央にパガノ広場があります。ここには名前は知りませんが常緑針葉樹の大木が数本ありました。数年前まではその木の枝にこの鳥たちが巣作りをしていました

が、2、3年前からこの木が枯れ始め、いまでは葉の落ちた元気の無い木が3本残るだけになってしまいました。勿論もうバンドウリア達も巣作りはしていません。

木が枯れ始めてから、町で見かけるバンドウリアも少なくなった気がします。

エルボルソンは住んでいる私達でさえ、その急成長に目が回りそうになります。人間の私がそうなのですから、野鳥達にはもっともっと住み難くなって来ていることでしょう。

野鳥といってもこのバンドウリアはもともと人間の近くで暮らしていた鳥達です。ですから、いつまでもこの大きな鳥達が私達の近くにいてくれる事を願わずにはいられません。

エルボルソンの町へ来たら、名物のクラフト市(フェリア)を歩いたり、近郊の観光地に足を伸ばしたりする合間に、是非この鳥たちの姿を探してみて下さい。

自然環境を破壊し続ける人間をまだ信じて、近くに姿を見せてくれるバンドウリアに「ありがとう」と思わずにはいられません。