時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「パタゴニア自動車運転免許事情」

今回は私の暮らすパタゴニアリオネグロ州での運転免許事情のお話しです。

私はこの国の免許証を持っていますので、先日免許の更新に行ってきました。

必要書類は顔写真2枚と医師の健康診断証、DNIと呼ばれる身分証明書のコピーなどです。先ず無料の公立病院に行き医師の診断を受けました。医師も心得たもので、入って行くと直ぐに使っている免許証の提示を求め、それを見ながら規定の用紙に、氏名、血液型、眼鏡の要不要を記入します。そして記入しながら私の顔も見ずに「健康か?」「見えるか?」と問診してきます。「はい」と答えると、するするとサインをしてその用紙を渡して下さり終わりです。その間3分ほど(外来患者さんが多いと待ち時間はかかりますが)。

次に役場の免許証係へ行き必要書類を提出するだけです。その時「臓器移植はするか?」と聞かれましたが、私は臓器移植には疑問もあるので「いいえ」と答えました。この国では殆どの人が「はい」」と答える様で、「いいえ」と言った時は「えっ!」と驚かれてしましたが、何も言わずNOと書き込んでくれました。

そして指定された日に新しい免許証を受け取りに行くだけなのです。この更新期限は5年で、かかった費用はコピー代2ペソ、写真代10ペソ、交付代24ペソの合わせて36ペソ(日本円で約1000円)でした。

15年近く前ですが、私は身分証明証が取れると直ぐに車の免許を取りに行きました。やはり病院で上記の様な健康診断を受け(この時血液型は自己申告でした)、必要書類を持って役場に行くと、新規という事で実技試験を受けることになったのです。ところがこの実技試験、自分で車を持って行かなければならないのです。もし車がなければ何処かで借りて行かなければなりません。つまり、家から役場までの道中自分で運転して行き、役場で係の人を乗せて15分程町中を回るのが実技試験なのです。そして事故も違反もなければ合格です。右側通行の運転で緊張し、停車時に歩道の縁石に乗り上げてしまいましたが、それでも無事合格する事ができました。ちなみに筆記試験はありませんでした。そしてその時受け取った免許証はなんと10年期限でした。

今では交通事故の多さから、ブエノスアイレス州などでは可成り免許取得も難しく、期限も短縮されていますが、ここパタゴニアでは15年前とあまり変わらない実技試験がまだ実施されています。

つまり、車を運転している人達はこうして免許取得をした人達なのです。当然、交通ルールはあって無いようなものと思わなければなりません。また最近では驚くほど綺麗な車が走るようになりましたが、それでも田舎では時々、ボンネットがなかったり、ブレーキがよくきかなかったり、写真のような車が走っています。事故に遭いたくなければ、兎に角自分で注意するしかないのです。ですから車に乗る時は勿論、車の多い町を歩く時でさえ、私は細心の注意を払っています。

広いアルゼンチン。特にパタゴニア地方はまだまだ交通の便も悪く、車が重要な足となります。もし万一レンタカーなどで旅行される機会がありましたら、どうかくれぐれもパタゴニア運転免許事情を考慮して、「自分の身は自分で守る」に徹して頂き、楽しい旅行をして頂きたいと願っています。