時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「パタゴニアの郵便事情」

今回はこちらの郵便事情をお伝えします。

パタゴニアでもネットの普及で郵便局を利用する人がぐっと減りました。数年前は、何時も郵便局には長蛇の列が出来ていたのですが、最近ではそんなことは滅多にありません。日本への手紙は届かない時もありますが、以前よりその確率は格段に減りました。パタゴニアからは10日前後で届きます。日本へは何故か葉書も封筒も同じ料金ですので、絵はがき等を送る場合は紛失の確率を減らす為に、封筒に入れて出すことをお薦めします。

さて、旅先で知り合ったアルゼンチン人に、日本に戻ってから何か送りたいと思う事もあるでしょう。でも、気を付けて下さい。日本からの小包は例え2kg以内のスモールパックでも、税関で留められる事が多いからです。

正直に言いますが、この税関がなかなか厄介なのです。もし荷物が税関で留められてしまった場合は、本人が出向いて直接受け取らなければいけません。例えば私の住んでいるエルボルソン地区なら、120km離れたバリローチェの税関まで行かなければいけません。しかも、税関の窓口は平日週3日、午前中しか開いていないのです。もし仕事を持っている方なら、仕事を休んで行くしかないのです。おまけに冬季は峠が雪の為閉鎖になったり、夏期は観光客で溢れ帰って交通渋滞だったりと、そうそう気軽に行ける所では無いのです。これはパタゴニアなら、どの地区でも事情は似ていると思います。

しかも、やっと税関にたどり着いても、ここからがもっと苦難の道が待っているのです。つまり、50%の課税です。もしそれが電化製品やコンピューターの部品なら最悪です。実質以上の価格評価され、がっぽりと課税されます。

海産物などは運悪く意地悪な、いえ、真面目な係員に当たると「禁止」と言われ没収されてしまうこともあります。しかも荷物は受け取りに行くまで保管料が毎日加算されていくのです。

年に一回だけ、25米ドル以内なら無税で受け取れる権利があります。そのチャンスを生かして海外から荷物を受け取る準備をしている時に、好意で送った小さなお土産が先に税関に着くと、その人の楽しみにしていた権利がそのお土産に使われてしまうのです。好意は嬉しいけど、素直に喜べない気持ちが生まれてしまう事だってあるのです。

実は私も、アルゼンチンに移住する前はそんな税関事情なんて知らず、友人にお煎餅を一袋送った事がありました。

たった一袋のお煎餅の為に、仕事を休み、一日潰し、保管料まで払って、姿形も残っていない粉々のお煎餅の残骸を受け取った友人の顔が目に浮かび、申し訳ない気持ちになるのです。もし御世話になったアルゼンチン人に何か形として気持ちを伝えたかったら、ごくごく普通の日常スナップ写真など送ると喜ばれます。

時々「日本には富士山しか無いの?」「自然は残っているの?」などと聞かれる事があって驚くからです。結構みんな日本には田舎が無いと思っているようなのです。

「メールだけじゃあ味気ない、何か記念になる物を。」と思う気持ちが裏目に出ないように、今回は老婆心で、パタゴニア郵便事情を書いてみました。

写真はエルボルソンからバリローチェ向かう国道40号線の冬の様子です。この近辺が一番標高が高く、積雪で閉鎖されることもあります。