時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

パタゴニアの田舎で生きる価値

9月21日はアルゼンチンでは「春の日」です。この日は「春の日おめでとう」と挨拶したり、親しい人に花を送ったりします。

まだまだ朝夜はストーブが欠かせませんが、農場の陽だまりでは水仙の花が咲き、玄関前のボケの花も蕾が日に日に膨らんでいます。

 

家族が増えました。

友人が「友達の所で子犬が9匹生まれたの」と、写真を見せてくれました。

小さな命達。

家にはフィナがいるけれど、もう一度沢山の犬達と過ごしたいと強く思いました。

それで「もし子犬の里親が決まらなかったら、男の子と女の子、兄妹で引き取りたい」と話しました。

 

それから1ヶ月後、我が家に新しい家族がやってきました。

男の子を「大将」女の子を「悟り」と名付けました。

 

亡くしてしまった「心」の事があるので、健康診断のため直ぐに町の獣医に連れて行き、寄生虫駆除の薬を3日間飲ませるように指導されました。

一回目を飲ませたその夜。

元気一杯だった大将が嘔吐を繰り返し、ぐったりとしてしまいました。何も食べず、起き上がらず、胃液ばかりを吐きました。そして元気だった悟りまで、4日後から具合悪そうに寝たきりになってしまいました。

 

「熱や嘔吐は体の中で病気と闘っている証拠だから、薬や注射で対処療法はしないほうがいい」と様子を見守っていましたが、悟りまで寝込んでしまったので不安になり、5日後獣医さんに診て貰いに行きました。

また幼い命を奪ってしまうのかと涙が出ました。

 

獣医さんは「女の子は風邪で熱があるけど大丈夫。男の子は痛み止めの注射だけ打つね」と言って、私に「この子達は何を食べていたの?」と聞きました。

「ちゃんと子犬用のドッグフードを買ってきて1日3回少しずつあげていました」

「まだ小さいんだから、ドックフードは強すぎるよ。骨のない鶏肉とかぼちゃとお米を煮て少しずつ1日4回あげなさい」

 

その時、頭をがーんと殴られた気がしました。

今まで「子供にインスタントなんて食べさせたらダメだよ。大変でもちゃんと作ってあげなきゃあ!」と偉そうに若いお母さんに言っていた私が、自分では市販のドックフードは栄養がある、と当たり前のようにあげていたのです。自分が情けなくて恥ずかしさで一杯になりました。

そして鶏肉とかぼちゃを買って行って、その夜、お米と一緒に煮ておかゆを作りました。

まだ食べられないだろうけど…と思いましたが、少しお皿に入れて子犬達の側に置いて見ました。

すると寝たきりだった大将と悟りが起き上がり、少し口にしたのです。奇跡のようでした。

そして翌日からはメキメキ元気になり、食欲も出てきました。でもこれは奇跡じゃなく、当たり前の事だったのです。

 

失わずに済んだ。

また助けて貰った。

大切な事を教えてもらった。

 

これをきっかけに多くのことを考えました。

折角携帯の電波も届かない夢のような素敵な場所に住んでいるのに、一年前に300m電線を引いて、wifiをつけました。便利になったと喜んで、一日中コンピュータの前にいた事もありました。でも私の持病が急に悪化したのも、まだ若かった黄金やテリーや心があっけなく逝ってしまったのも、姫が急に老けて逝ってしまったのも、もしかしたら電磁波の影響があったのかもしれないと思いました。

文明を否定する気は全くありません。便利な事は感謝して利用させて貰えば良いと思います。でも今の私に24時間ネットが使える環境が必要かと考えた時、答えは「必要なし」でした。

大袈裟とか、電磁波なんて影響ないという人もいます。人それぞれの価値観です。

私が何を選ぶか?どう進んでいくか?それだけなんだと思います。

今は朝と夜の1時間程度だけ接続して、後はコンセントを抜いています。私にはそれで充分有り難いです。

 

私がこの場所を守っているんじゃない。私がこの子達を育てているんじゃない。

私が守られ教えられ助けられているのです。そう思ったら、素直に自然から動物達からこれからの生き方を学びたいと思いました。

今ここに居られることを、支えてもらっていることを、生きていることを、心から感謝しています。

 

 

 

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大御所福おばちゃんと

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ちょっと出掛けてかえってきたらこの有様。ちびっ子ギャングの仕業です