時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「のうじょう真人の元気のもと」


「のうじょう真人(まじん)」と言うのは、私達の5,5haの土地に付けた名前です。マジンアオガード(Mallin Ahogado)が私達の住む地区の名前。マジンと言う響きから私達の尊敬する福岡正信先生の言葉「真の人間(真人)作り」が直ぐに心に浮かびました。先生は「人間の真の歓び、息吹、楽しみは自然の法悦であって、大自然の中にのみあって、大地を離れては存在しない。したがって、自然を離れた人間環境はなく、生活の基盤を農耕におかねばならぬのは当然であろう。また、すべての人々が、郷(むら)に帰って耕し、真人の里を作ってゆくことが、理想の村、社会、国家を作る道となるのである。」と述べておられます。

理想の村とか国家と言うと私達にとっては大袈裟な様に思いますが、自然の中で自然に学びながら暮らすことが豊かに生きることだと、つまりここパタゴニアで「真の人として心豊かに暮らそう」という思いから「のうじょう真人」と名付けたのです。

理想と現実は違います。人間の暮らす所は、結局世界中どこも同じで、様々な問題を抱えています。辛い事も理不尽な事も悔しい事も情けない事も不安な事も山ほど抱えています。

でも私は、「今の自分が楽しい」と思う事が出来ます。八方ふさがりに思えても、きっと大丈夫、何とかなるさ、と前向きに考えられる様になりました。それは、ささやかでものうじょう真人の自然が私を見守り支えてくれていると感じる様になったからです。毎年、小鳥や野ネズミ達は実った果実を運んで農場中に種を播いてくれています。風が多くの種を農場中に運び播いてくれます。そして私達もあらゆる種を意図せずにばら播きます。

そうして気が付くと、もう15年近い年月が経っていました。私が初めて播いた「りんごの種」が育ち、今年初めての実がなりました。花が咲いた喜び、それが実った嬉しさ、そしてその実をもいで食べた感動。たった一つのりんごがこんなにも心豊かに幸せにしてくれるものだと、改めて自然に感謝したのです。

私達の農場の果物の木は剪定も移植もしません。肥料も水やりもしません。まったく自然に任せ自然に育ちます。だから成長もまちまちです。実も小さいです。それでも世界中で一番美味しい実だと自負しています。そんな苗木に「里親」さんを募り「のうじょう真人、こころの住人さん」として成長を見守ってもらっています。「最初の実は必ず食べに来る」と言ってくれる人もいれば、「一生会えなくても育ってくれているだけで嬉しい」と言ってくれる人もいます。

私はその皆の思いが集まっている苗木を見つめながら、楽しさと元気をもらっているのです。

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「のうじょう真人、こころの住人さん」
農場で「種」から育ったりんご、さくらんぼ、プラム、カリン、南極ブナ、松などの苗木の里親さんになって頂いて、こころで育てもらっています。メールで写真をお送りします。

希望者には4月末頃(年によって変わります。)に落ち葉と共に、自家製天然ハッカ茶、ローズヒップ茶、のうじょう真人の焼き物などを一緒にお送りします。(但しこの場合は有料です)詳しくお知りになりたい方はご一報下さい。