時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「インヘニェーロハコバシーのJorge Gerhold博物館」


乾燥地帯の真ん中にぽつんと現れる町がインヘニェーロハコバシーです。ここは珪藻土カオリンなどの鉱山関係で開かれた町です。行くにはバリローチェからバスか列車、または自家用車しかないとても不便な町です。
国営ラジオ局もあり、その名前はよく耳にしていましたが初めて訪れたのは昨年でした。それは焼き物材料を探している時に、この周辺には珪藻土を始めカオリンや赤い粘土などとても興味深い自然材料があると知ったからです。
エルボルソンからは約270km。荒涼とした乾燥地帯をひたすら進むと、まず白い粉の舞い上がる珪藻土採掘現場に着きます。突然現れるその白い風景と広さには度肝を抜かれます。
そこから40km程進んだ所にインヘニェーロハコバシーがあります。町はエルボルソンと同じくらいの大きさですが、観光地化されておらず、ガソリンスタンドも一軒、レストランも目立たず、土産物屋も殆ど目に付きません。
いつもは燃料補給の為に立ち寄るだけでしたが、今回はなんと唯一のガソリンスタンドに燃料が無く、足止めをくってしまったのです。「午後2時には来る」の言葉を信じて駅の駐車場で待つことにしました。長旅の運転で疲れていた夫は車の中で昼寝。私は退屈しのぎに町をブラブラ散策する事にしました。
目的も無く、こうして知らない町を歩くのは久しぶりです。乾燥地帯のど真ん中にあるのに、割と大きな木が育っています。きっと周りの乾燥地も山羊の放牧を止め、種を播いたら緑が復活するんだろうなあ・・・と思いながら歩いていました。すると、大きな木の化石が二つどんと置いてあるのに気がつきました。
近寄って見ると、そこが博物館の入り口だったのです。間取りは小さく、時間もお昼休みで開いていません。大して興味も湧かず、そのまま行き過ぎました。
そして午後2時。案の定、ガソリンスタンドにはまだ燃料は来ていませんでした。
こうなったら燃料が来るまで待つしか方法はありません。そこで時間つぶしにお昼に見つけた博物館に行って見ることにしました。
狭い入り口を入ると、小さな部屋に創立者Jorge Gerholdの写真や彼の使った古いタイプライターなどがガラスケースの中に展示されていました。
「まあ、思った通りだったな。」
と帰ろうとしましたが、右手にもう一つの扉があるのに気がつきました。折角だからと軽い気持ちで開けたら、中は奥行きが深く、5つのゾーンに分かれて、化石、石、鉱石、やじりや石臼、焼き物の出土品、恐竜の骨、原住民マプーチェ族の伝統工芸などがそれぞれ解説付きで展示されていました。
そして突然入ってきた旅行者の日本人の驚き喜んだ受付の女性が、自ら説明案内をしてくれたのです。
地元の子供が時々訪れるだけで、ガイドブックにも紹介されていませんが、展示品の殆どが近郊で発掘された物で、とても充実した内容の博物館でした。
インヘニェーロハコバシーは交通の便がとても不便ですが、この博物館を見るだけでも価値があります。また、バリローチェからは不定期で列車も走っています。この列車の旅と合わせて楽しむのも良いかも知れません。
車の燃料不足という思わぬアクシデントに巻き込まれましたが、大きな収穫のあった旅でした。

インヘニェーロハコバシーへの交通は弊サイトをご覧下さい。小さいですがホテルもあります。