時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「山に登って」

nojomallin2007-03-05

久しぶりにマジンにあるアンデス山脈の一つ、ペリートモレノ岳へ登ってきまし た。標高2216mのそれ程高くない山ですが、山頂付近には氷河もあり、ほとんど登山 客も居ないので私達の大好きな山です。

この山に登るのはこれで何回目でしょうか?毎年一度は登っていますが、高山植 物は可愛く、運が良いとコンドルや大きな野がも一家も姿を見せてくれるし、毎回新 鮮な驚きや楽しみに出会える山です。

今回はブエノスから休暇を利用してやって来た友人夫婦と犬の「羅空」も一緒で した。私達は「ピクニック気分で登れる山」だと思っていたのですが、今まで山頂付 近まで辿り着けた友人は数える程しかいません。実はちょっと太めの友人夫婦には無 理なんじゃあないかなあ?と心配したのですが、流石「ポルテーニョ(生粋のブエノ スっ子をこう呼びます)」。私達が心配するのが悔しいらしく決して自分から「止め よう」とは言わず、はあはあぜえぜえ、顔を真っ赤にしながら、休み休みでしたが山 頂付近の岩場まで辿り着きました。

残雪に無邪気に大喜びしたり、高原台地の地形や石の面白さに感嘆したり、私達 の知らなかった思わぬ表情を見せてくれて、一緒に来て良かったな、頑張ってここま で辿り着いてくれて良かったなと嬉しくなりました。もう一つの心配の種だった「羅 空」も、さすが四輪駆動だけあって、野ウサギを追いかけて急坂を駆け下りたり、疲 れなど全く見せず大はしゃぎしていました。 

このペリートモレノ岳はスキー場開発が進み、高原台地までの「ニレ」の大木が 全て伐られ、あちこちでブルドーザー用道路が造られています。14年前初めて登った 時は、巨木の林の中、整備されていない登山道を進みながらパタゴニアに住んでいる 幸せをしみじみ感じたものでしたが。

氷河まで行くにはかなり急坂で、大岩を幾つも超えて行かなければいけないの で、流石の友人夫婦もその道のりを見て「いやあ〜!ここまでくればもう充分!」と 最終目的の氷河見物は断念しました。そして、平らな大岩の上でゆっくりお弁当を食 べ、昼寝をして、空の蒼さと川の音を楽しみながらのんびりと時を過ごしました。

観光地化の為ずたずたにされていく自然達。でも、何をされても、どんなに傷つ けられても、何時だってこうして私達を受け入れ感動を分けてくれます。スキー場反 対!自然保護!と叫んでも、もう止められない勢いがついてしまっています。それで は私に出来ることは何だろう?それは山の姿を嘆き悲しむ事では無く、今ある姿を受 け止め感謝し、感動していく事だと思ったのです。

これから山は山頂から少しずつ紅葉が始まります。秋の赤く色づく山の姿を遠く から見るのも、その中に入って包まれるのも大好きです。 野生のすぐりの種も熟す る頃。種を採ってのうじょう真人に播きたいなあ、と山を見ながら思っています。