時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「木イチゴを摘みながら」

nojomallin2007-02-14

年が改まってから、一滴の雨も降らないカラカラ天気が続いています。日中は直 射日光が強く、とても外には出られません。ですから私達は”遅寝遅起き”のラテン の習慣に逆らって、朝6時には起きるようにしています。そしてまだ日光が柔らかい 11時くらいまでの間に、なるべく外仕事をする事にしています。夫は焼き物用と家の 燃料用の薪作り。私は主に果樹の収穫をします。

パタゴニアでは珍しい高温多湿の夏を過ごしていますが、初夏が低温だった為、 花の開花が例年より2週間程度遅れました。ですから、本来ならそろそろ収穫も終わ る「木イチゴ(ラズベリー)」が今、真っ盛りです。

草やルピナス、アマンカイなどの花に囲まれ、自然農法で半野生化した木イチゴ 達。

実は私達、硬い種が苦手でジャムは食べません。発酵させて天然ジュースや酢、 シャンパンを作っています。これらを作る時は、発酵させた実を搾った後漉すので、 多少葉っぱやへた、他の草の種が入っても気にせず、ドンドン収穫していきます。で も今年はジャム用に熟した実を選び、他の物が入らないよう気をつけながら、一つ一 つ丁寧に摘んでいます。手間はかかりますが、とても「幸せ」な時間です。なぜな ら、「のうじょう真人の木イチゴジャムが大好き。」といって、私の手作りジャムを 楽しみに待っていてくれる友人が居るからです。来月、日本へ行く人に届けて貰える 事になり、張り切っているのです。

朝露に濡れながら、甘い香りをあたり一面に漂わせている木いちごを摘みなが ら、私はこの木イチゴジャムを待っていてくれる友人達の笑顔を思い浮かべます。 時々「ぽいっ」と自分の口に放り込んだり、うずうずして待っている人和(れんほ う)、地和(ちいほう)にも投げてあげます。この2匹の犬達も「木イチゴ」が大好 きで、私が収穫を始めると側から離れません。

木イチゴの収穫期が終われば、次は天然はっかとラベンダーの収穫期。よく乾燥 させてお茶にします。雨が降れば、きっと、きのこも顔を出すでしょう。そのどれも が自分達だけの為ではなく、ましてやお金の為でもありません。その先には「楽しみ に」待って居てくれる人達の笑顔が見えます。

いつも誰かに助けて貰うばかりで、なんの恩返しもお礼も出来ない私達。せめ て、自分達で作る物に、思いっきり心を込めて届けたいと思います。木イチゴを摘み ながら、こんな幸せな気持ちをくれて「ありがとう」と、のうじょう真人の自然とい つも応援してくれる多くの人達に感謝します。