時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

出会い

nojomallin2006-10-24

簿記の専門学校を卒業して、一年だけのつもりで北海道の酪農実習に行き、初めて自分から「学びたい」と思い、二十歳で改めて北海道の農業専門学校に入学しました。
初めての寮生活。
年下の現役入学者だけでなく、社会人経験者、大学卒業者、ブラジルからの留学生など、年齢も人生経験もまちまちの同級生達に囲まれ、落ち込んだり、はしゃいだりしながら、とても充実した毎日を過ごしました。卒業する時、
「こんなに多くの人と出会い、泣いたり笑ったりする事は、きっともう無いだろうな。」と2歳年上の親友に話したら、
「そんなことは無いよ。こらからもっと多くの出会いが有るよ。」と言われました。
その時は「そうかなあ?こんな出会いはもう無いような気がするな。」と本気で思っていましたが、あれから20年以上経った今、彼女の言葉は色あせず、益々輝きを増して私の心に響いています。

人混みが苦手で、特別な用事が無い限り農場から出ないで過ごす私達夫婦ですが、不思議なもので、新しい出会いが途切れる事はありません。
そして今、私はまた、新しい出会いの感動に包まれています。
勿論全てが楽しい出会いではありません。自分達の信念を貫いて暮らすことは、時には人の流れに乗らずにいて、反発や反感を買ってしまうことがあります。
上手に人と付き合うことが出来ないなら、せめて、憎しみ合うことだけはしたくないと思っているのに、心の貧しい私は、人とぶつかり火花を散らしています。そして、人を傷つけ、それ以上に自分も傷ついているのです。
それでも、「反省しよう」「前へ進もう」と思えるのは、私を励まし支えてくれる、優しい出会いがあったからです。
この年になってもまだ、助けてもらう事ばかりで、これからどんな恩返しができるのか見当もつきません。今はただ、受け取った「宝物」を、大切に心の中で磨き続けていくだけです。
急速度で変わって行く、のうじょう真人の周りの環境に、落ち込んで逃げ出したくなっても、ここで暮らしたからこそ出会えた、優しい人達の顔を思い出すと元気が出ます。そして、諦めず、投げ出さず、明るい前向きな気持ちで進んでいれば、こらからもきっと、涙が出るような「新しい素敵な出会い」が待っていると信じる事ができます。