時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

感激だった。プロの技

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私は旅行をしません。

家を空けるのが心配という事もありますし、体力的にしんどい事もありますし、知らない場所への好奇心より不安の方が強いですし、食べることは好きですが、料理に関心がありませんし、建築や芸術品への造詣がありませんし、経済的なゆとりも心のゆとりもありませんし、人見知りですし、臆病ですし…。

理由を挙げるときりがありませんが、一番の理由は、一緒にいる猫と犬達が好きで離れたく無い事と、ここにいるとホッと落ち着くからです。

だから私のブログを読んで連絡をくれて、更には「会えませんか?」など言ってきてくれる方がいると、何処へも行かないのに、未知の場所が私に近づいて来てくれるようなワクワクした気持ちになります。

 

3月の終わりにイギリスからアルゼンチンを訪れたご夫婦から連絡を頂きました。

「お会して、お茶でも飲みながらお話しできたら」と仰るのを、是非我が家でお昼をご一緒にと強引にお誘いしました。住所を教えて頂ければ、レンタカーで伺いますといわれましたが、番地もない我が家に初めての人が辿り着くのは至難の技です。

エルボルソンの町に宿をとっておられたので、朝私がお迎えに行き、近郊を少し案内しながら我が家に行きました。

日本人の奥様は翻訳業、イギリス人の旦那様は切り絵のプロでした。

www.roving-artist.com

 

 

旦那様は結婚式やパーティーに引っ張りだこで、今回はまとまった休みが取れた貴重な旅行でした。

短い時間で案内できるエルボルソンの名所?を本当に久しぶりに行きましたが、全て入場料を取られ、立ち入り禁止場所も増え、手すりやベンチが出来、何処にでもある鄙びた観光地になっていて、私の知っていた手付かずの自然、のどかな田舎町のボルソンはもうありませんでした。

都会から休暇で訪れる観光客には、安全でそれなりに楽しめるのかもしれませんが、私は残念でした。そしてもう観光案内はしたくないなと、思ってしまいました。

私の案内も道は間違える、地元のくせに穴場も知らないで、貴重な時間を無駄にさせてしまって申し訳なかったです。

 

ただ私は興味のあるお話をたくさん聞かせて頂き、楽しい時間を過ごせ、現在のボルソン事情も分かり、凄く得した気分になりました。

 

そして奥様自作のミニチュアを頂き、旦那様は私の横顔をあっという間に切ってくださいました。

プロの方に、似顔絵でも写真でも、私を見てもらった事もなかったので、緊張と嬉しさでドキドキでした。自分でも知らない私の横顔はこんな風に人の目に写っているんだなと不思議な気もしました。

 

今までの私は、自分の暮らす空間に人が入り込んでくるのが苦痛でした。うまく人と付き合おうと無理して、結局相手を疲れさせ、自分も落ち込んでいました。苦手な人も多くいました。後味の悪い思い、後悔もありました。それは自分の生活がこの先も変わらないで、ずっと続いていくと何処かで思っていて、自分に壁を作り、見栄を張っていたからでしょう。

移住して25年目。過ぎてしまったから思うのでしょうが、夢の様なあっという間の時間でした。そしてこの先の同じ長さの時間を考えたら終わりが見えてきて、自分がここでしておくべき事に気付きました。

あっという間に終わっちゃうなら、今まで自分が受けてきた恩や優しさ、思いやりを、残りの時間で返していかなきゃ、自分を閉ざす必要なんてないんだと思えました。

具体的に何をどうするかはまだ方法が全く分かりません。でも、自分の横顔を見ながら、こんな出会いを重ねていって、今度は自分だけじゃなく、出会った人たちにも自分の感じた感動を渡してあげられたらいいなと考えています。