時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「石を割って」

nojomallin2007-07-09

「石を割って」

子供の頃本を読むのが好きでした。野外で活動する事や自分で試してみる事が苦手で、本や学校の授業で学ぶ事が全て正しいと思っていました。

私がパタゴニアで暮らして一番大きく変わったことは、「知識よりもやって見なければ分からない」と思うようになったことです。もともと勉強嫌いで怠け者だったので、大した知識が有るわけではありませんが、活字や映像で見て「知っている」と思っていたことでも、実際の暮らしの中では役に立たない事、結構間違っている事が多いのだと実感しています。

焼き物を始めて自然の中から材料を探す様になってから、特にそう感じる事が多くなりました。

夏に乾燥地帯に焼き物の粘土、釉薬用の石や砂等の自然材料探しに行きました。炎天下の中、日帰り500kmの旅なんていうのもざらでした。体力的にはかなりきつい旅でしたが、とても面白く勉強になりました。そして益々、科学分析がどうとか、化学記号がどうとか、そんなことがどうでもよい役に立たないことに思えてきました。

自然の中ではそんな数字よりも、もっともっと大切で面白い驚きが沢山あるのです。自然を分析していったい何になるのでしょう?それよりも自然の中で自然から学び、感じ、感動する事のできる心を大切にしていきたいと思っています。

乾燥地帯で見つけてきた石を割ると、外観からは想像出来ないような模様が現れたりします。また、同じ場所で見つけた同じ様な石でも、割ってみると全く違う表情が現れます。

写真の石は良く分からないかもしれませんが、白く卵の用な形で、割ってみると予想もしなかった渦巻き状の美しい模様が現れ、心が躍りました。でも、この石を見せても、殆どの人はあまり感動しません。私達がこの石に感動するのは、自分達で歩き、探し、割ってみたからなのでしょう。

「知識が無い」と言われても、私はこの石に感動できる心をいつまでも持ち続けていたいと思っています。