時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

のうじょう真人、始めての冬の思い出

昨夜から降り続くどしゃ降りの雨
ストーブに放り込む薪はパチパチと乾いた音をさせ、暖かく燃えてゆきます。
鍋の中では菊芋か煮え、少し癖のある甘い香りを漂わせています。
「ああ、冬はいいなあ」私はマテ茶を飲みながら、しみじみ感じます。そして、10年前の初めてのマジンでの冬を、懐かしく思い出すのです。
秋も深まった4月、私達は引っ越して来ました。
薪小屋は空っぽ。家具も無い私達にはだだ広い家。在るのは料理用薪ストーブが一つ。
冬はあっという間にやって来ました。
寒さに目覚めると、家中の窓ガラスが真っ白に凍りついていました。
大慌てで買った薪は、半分が生木、火の付け方も下手で、何回も家中を煙りだらけにしました。
雨で道がぬかるみ、車が登れなくなって買い出しに行けず、(ああ、もう小麦粉が無くなる)ハラハラしながら、慣れないパン作りをしました。
でも、隣人のフェルナンド一家が食事に招待してくれたり、日本好きなローウェンが野菜やジャムを持って来てくれたり、やさしい心に出会いました。
20数年ぶりのしもやけのかゆみが、忘れていた子供の頃のあれこれを楽しく思い出させてくれました。
白い息を吐きながらもぐり込んだベッドの中で抱きしめた、温めたレンガのぬくもりが心を躍らせてくれました。
あの時に“生活を楽しむ”ことを教えられた気がします。
でも、正直言うと、あんな冬はもうこりごり。今は薪の準備も、食料の買い出しもバッチリ!
安心してゆったりした冬を過ごしています。