時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

自然に自然に

パタゴニアの11月は風の季節。サクランボの花が風で一気に散りました。露天風呂には舞い降りた花びらが一面に浮いて風情があります。

でもお湯を沸かすと花びらは残骸と化してしまうので、花湯を楽しめる訳ではありません。

 

ブエノスアイレスでは10月に35度という高温を記録しました。

パタゴニアでも結局まとまった雨が降らず、山に雪が無く水不足が始まっています。

30年住んでいる人が、井戸が枯れ、春の畑の種まきが出来ないと嘆いていました。我が地区の名前Mallin(マジン)は原住民語で湿地帯という意味だそうです。

20年前までは冬はバケツをぶちまけたような雨が何日も続き、アスファルトもなかったので、ドロドロ道で立ち往生する車も有りましたし、我が家の敷地にもいくつも小川が出来、まさに湿地帯でした。そして夏でも適度の雨があり、万年雪を被った山が輝いていました。

その頃はここが水不足になるなんて想像もできませんでした。

世の中が変わって行くのは当然のことかもしれませんが、特にコロナになってから、いろんな事が大きく変わりました。何があるか分からないと本当に思います。そして方法さえ知っていれば、人って案外簡単に流れに巻き込み誘導する事が出来るんだなと感心しています。

 

それでも時間は変わる事なく過ぎて行きます。

パタゴニアにも春が来ました。花が咲き、緑がどんどん鮮やかに深くなっていきます。

家の前に名前も知らない木が植えてあります。

25年前、友人から小さな苗木を貰い、こんなに大きくなるとは想像もせず、何気なく玄関前の階段の上に植えたものです。

細いですが、今では見上げる程の大木に成長しました。

 

今小さな白い花がいっぱい咲いています。この花はかなり香りがあります。わたしはこの香りでいつも、子供の頃のトイレの芳香剤を思い出してしまいます。

昔の人口的なきつい香りを思い出してしまうなんて、この花にとても失礼な事だと思っていますが。

ただこの時期に木の下を通るのは大好きです。

それは蜜蜂たちが花の蜜を吸いに来ていて、盛大な羽音がしているからです。

私は蜜蜂が大好きです。とても可愛いと思います。

世界的に問題になっていますが、今蜜蜂がどんどん減っています。パタゴニアでも例外ではありません。もう何年も大きな分封を見ていませんし、春先の猫柳に花粉を集めに来ていた蜜蜂もほとんど見なくなりました。

でもこの木の花だけには、毎年沢山の蜜蜂たちが来てくれます。

「よく来てくれたね。」「どこから来たの?」「蜜は沢山ある?」

 

気候変動とか環境汚染とか電磁波とか、ゴミだらけの地球の問題は大き過ぎて、絶望したり見て見ないふりをしたりしているけれど、蜜蜂たちは花の季節には花粉や蜜を集め、文句も言わず絶望もせず一生懸命に生きて、そして人間の犯した罪に中で、黙って滅びていくのです。

 

私にはどんどん住みにくい世界に変わっている気がします。

でも美しく咲く花、飛び回る蜂、伸びていく木や草。

感動や感謝だけを残して潔く去って行く自然の命達のように、私も嫌な感情を後に残す事なく、気持ちよく去っていくために、丁寧に毎日を送っていこうと思い直します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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見えませんが蜜蜂がいっぱい来ています

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今回は甘えん坊で超利己主義の大将君のアップです