時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

元気だった。駐車場のマンサニージャ

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パタゴニアに来て私はハーブティーを飲むようになりました。
それは自生のハーブが取れるからです。
メンタ(ハッカ)は収穫しやすく保存しやすく飲みやすく、冷たくても温かくても美味しいお茶です。以前、ビニールハウスがあった時はレモンバームがありましたが、ビニールハウスを壊してからは気温が足りずに枯らしてしまいました。
ロサモスケータ(ローズヒップ)はそこら中に生えていますが、棘があり収穫しにくく、種がぎっしり詰まっていて、それを取って乾燥させるのにも手間暇かかり、ここ数年は季節に実を収穫して楽しんでいますが、保存する事はなくなりました。
ラベンダーの花は独特の香りがしてちょっと渋いのでハーブティーとしてはあまり飲まず、こちらのお茶マテ茶に混ぜて時々楽しんでいます。

我が家とエルボルソンの町では標高が100mくらい違うので、植生が違います。
特に我が家は窪地にあって日当たりが悪く、それなのに乾燥気味で植物たちが育つ環境はあまり良いとは言えません。

この時期町に行くと私の好きなお茶マンサニージャ(カモミール)が花を咲かせています。
ええっ、こんな場所に?と思うような、砂利の多い歩道、駐車場のカラカラに乾いた場所に生えているのです。
あまりに埃っぽくって、人も車も犬も猫も野鳥も通る場所だし、流石に収穫してお茶にしようとは思えませんが、羨ましくて仕方ありません。
株をいくつか頂いて(勝手にですが)移植したり、種を蒔いたりしましたが、我が家には定着しませんでした。

なんとか自給自足に近付こうと、ビニールハウスを作ったことも、畑に羊の堆肥を買って入れたことも、電力を使って水やりをしたこともありました。でも一時的に良くなっても、それにかかる時間やエネルギー、経費はとても無駄な事だと気づき、また自然に大きく反したことをしていると思いやめてしまいました。
何もしないで自然に任せていたら、いつしか農場は木が育ち、草が伸び、果樹が増えました。
そうか、それで良いんだ。
私はここに育つ命たちと一緒に居られる。今いる場所に一番適した命が、どんどん育って行く。たとえそれが食べられなくても、生きているエネルギーの力を全身で受け止められる。
それがどんなに贅沢な事がわかりました。

とても快適と思えない場所に育っているんだから、我が家にだって咲いてよ、とマンサニージャに言いたくなってしまいますが、彼女たちには今いる場所が最高に気持ちの良いところなんでしょう。
だったら、街で出会ったマンサニージャに、
「いい香りだね。楽しませてくれてありがとう。頂きます。」と、命のエネルギーを体いっぱいに感じさせてもらおうと思います。