時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「竃煤」

4年前 小さな家を作りました。その経過はこのブログに書いてきました。
その時に私個人は無一文になりましたが家作りにはとても足りず、姉と義父の援助で完成しました。
壁はまだコンクリート剥き出しのままですが、夢だった囲炉裏も土間も出来ました。竃は何度も夫が作り直してくれましたが、最後に小さな竃を作った時冬になってしまいました。急いで作ったのでひび割れが多く煙が漏れるので、冬の初めに一部を壊し、私が補修してみました。

2月から毎土曜日、この家で日本語教室をしています。一時間かけて通ってくれる生徒さん(兄弟とお兄ちゃんのお嫁さんの3人)がいて、この小さな家をとても居心地が良いと気に入ってくれています。
夏の間は窓の小さな家は涼しく過ごしやすかったのですが、最近は暖房なしでは冷蔵庫の中にいる様に冷え込んでしまいます。それで竃を暖炉代わりにしています。
この竃、上手く機能しているか?と言うと、実は思った程快適では無いのです。奥行きが無く、少し長い薪を入れると、煙が家に流れ込んでしまいます。また竃がとても小さいので燠がたまると煙突口を塞いでしまい、ガスが出てきます。薪の消費も早く効率が良くありません。
折角作った囲炉裏も、ここでは良質な炭が手に入らず、長時間付けると一酸化中毒になりそうで危険なので家の暖房としては使えません。でもこれから益々寒くなっていくので、今から壊して改造するわけにはいかず、日本語教室の日は朝から付きっ切りで細い薪を丁寧に燃やし、煙とガスが出ない様に竈焚きをして家を暖めています。
先日もそうして家を暖め日本語教室をしましたが、細かい薪の準備が間に合わず苦労しました。
それでも楽しく授業をし、「じゃ又来週ね〜」と見送って、その後ふっと鏡で自分の顔を見て吹き出してしまいました。
何と、鼻の穴の周りが見事に煤で黒く彩られていたのです。子供の頃ギャグ漫画で見た、腹巻して鼻毛の出たおじさんその者だったのです。(今時そんな漫画 無いかもしれませんね)
優しい生徒さんたち、見て見ぬ振りをしてくれたのか、幸い家が薄暗くて気が付かなかったのか、何も言いませんでした。
恥ずかしいと言う思いよりも、この間抜けな自分の顔に大笑いしてしまいました。
でも流石にこの顔を人様に は見せられません。ああ、早く気付いて良かった!
日本の昔の家が黒く煤光しているのはかっこ良いですが、きっと住人さんたちもそれなりの苦労があったんだろうなと思いました。
春になったら新しく竃を作り直してみようと思います。燠が多少溜まっても大丈夫な様に、もう少し奥行きを深くし、焚き口をしっかり閉められる様に工夫します。
今までは何でも人任せで、自分で工夫したり苦労したりしませんでしたが、もうそれが許される状況でも人に甘えらる歳でもありませんから、春がきて暖房としての竃が必要なくなったら頑張ってみます。
来年の冬はシワは増えていても、竃煤の付いて無い恥ずかしく無い顔で日本語教室が続けられていたら嬉しいです。