時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「御点前」

私が実践している西式健康法では、ビタミンC補給に柿の葉茶を薦めています。パタゴニアには柿はありませんし、アルゼンチンで柿の葉茶を飲む習慣もありません。ですから、日本帰国時に大量の柿の葉茶を買って持ってきました。でも毎日1リットル以上飲んでいるので、先月にはそれも無くなってしまいました。私はコーヒーも紅茶も緑茶もほとんど飲まないし、いつも飲んでいた天然ハッカ茶にはあまりビタミンCは無さそうだし。どうしようかなあと思っていた時、お茶のビタミンCの含有量を比較した図をみつけました。
はまなすの実が2200mg/100gで断然1位です。柿の葉茶は第3位で600〜800/100g。そして柿の葉茶より含有量の多い第2位が、野ばらの実で1250mg/100gだったのです。野ばらの実。そっかー!パタゴニアにわんさと生えているローズヒップの事じゃないですか。以前から実が熟す5月頃から時々摘んで来て煮出して飲んではいましたが、今年は乾燥させて1年分のお茶を作ろうと決めました。
また煮出すとビタミンCは破壊されるし、一気に飲んでも体に吸収されないそうなので、潰した実にお湯を注いでお茶を作り、ペットボトルに入れてちょびちょび飲むことにしました。
でもこのお茶作り、結構大変なのです。先ず収穫。これはトゲトゲの株から一つずつトゲに気を付けながら取って、その後がくをやはり一つ一つ取り除きます。それから半分に切り、中にびっしり詰まった種を手で取り除きます。種は不用意にそこら辺に捨てると、一気に芽を出し大変な事になるので、種さんには申し訳ないけれどストーブで燃やします。
その後自然乾燥させ、細かく切って保存します。
自家製ローズヒップのお茶。私は自分が苦労して作ったこともあるので、美味しいと思いますが、そう思うのは私だけのようで・・。
苦味がある。味が薄い。美味しくないetc。
まあお気に召さない方は他のものを飲めばいいだけで、わざわざ苦労して作ったお茶を、文句を言いながら飲んで頂かなくても結構なんですが…。
でも本当はそれは間違いなんです。
ローズヒップのお茶を美味しいと思えないのは、実は作った人の心がそれに反映しているからなんです。私は最初は「綺麗に実をつけてくれてありがとう」「ビタミンCをありがとう」「皆んなが楽しんで飲んでくれます様に」と思いながら作業しているのですが、ふっと気がつくとそんな気持ちはどこかへ去って別な事、しかも大体が嫌いな人の事、嫌な思い出、腹の立った事、傷ついた言葉を頭の中で反芻しているのです。それじゃあ美味しいお茶が出来るはずがありません。
ハッと気付いてまた「ありがとう」を繰り返すのですが、時間が経つとやっぱり嫌な事を考えている自分がいます。せめて無意識のうちに楽しい事を考えられる様になったら、もう少しお茶の味も美味しくなるのでしょうが。
どなたからも「結構な御点前です。」と心から言ってもらえる様なお茶を作れるように、この長い冬、心してローズヒップ茶作りに励みたいと思っています。