時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「料理下手な私の作る手作り味噌が美味しい訳」

私は料理が下手です。たまに稀に「美味しい」と言ってくれる方も居ますが、もし毎日私の料理を食べる事になったら、その感想は違ったものになるで しょう。
面と向かって「まずい」と言われる事もあります。むっときたり、落ち込んだりもしますが、「よーし、頑張って美味しく作るぞ!」と思わない所が努力嫌い な、いい加減な私らしく、向上しない原因でしょう。
料理下手な理由の一つには私が酷く味音痴だと言う事もあります。カビ臭いとか生臭いとか言われても全然気付きません。
第二に如何に食費を節約するかを常に考えてしまう事です。素材の良さも分からない変わりに、化学調味料もインスタント食品も美味しいとは思いません。
食べる事にはいやしいのですが、食べ物にこだわりもありません。だから日本食 が恋しいと思う事もありません。
菜食主義ではないのですが、肉とか魚とか乳製品とか卵とか、全然食べる気がし なくなりました。決して自慢できることではないのですが、それはそれで海外 貧乏生活では便利な事です。
私の料理の基本は、ここで手に入る素材を利用し、食べたい物は自分で作ると言う事です。
だからうどんもパンもお菓子も餃子もコロッケもまんじゅうも、どんなにまずいと言われようが自分で作ります。
ただ正直言うと、料理を作るのはあまり好きではありません。特に時間の掛かるものや手の込んだものは面倒くさいという思いの方が強くなってしまいます。 だから私の料理は美味しくないのです。
ところが、そんな私の作るもので、90%近くの人から好評なのが「味噌」です。
大豆味噌、ソラマメ味噌、麦味噌、豆板醤、野菜クルミ味噌。
わざわざ我が家に買いに来るアルゼンチン人も居るほどです。
大豆はここでは収穫できないので購入しますが、ソラマメはこの気候に合っていて、自然農法で十分収穫できます。
米は買いますが、麹は自分で増やします。
鍋の大きさ、麹箱の大きさなどから、一回に1.5kgの麹しか作れないので、20リットル容器に味噌を仕込む為には3回連続で味噌つくりを繰り返します。面倒 くさがり屋の私ですが、味噌つくりに関しては、どんな作業も楽しくてたまりません。
ソラマメ味噌の場合、1.5kgの乾燥豆を3日以上水で戻し、軽く茹でて柔らかくした豆の皮を一つ一つ手で剥いていきます。それは結構地味で根気のいる単調作業 です。でも何故か楽しいのです。
皮をむいた豆は柔らかくなるまでふかします。そして良く擂りつぶし、麹と塩を混ぜ容器にきっちり詰めていくのです。
乾燥ソラマメ1.5kgと麹1.5kgそれに塩は400g位。全て目分量と言うのがいい加減な私らしいところ・・・。
でも自慢じゃあないのですが、失敗した事はありません。まあ味噌つくりを失敗する人なんてまず居ないのでしょうが。
麹作りに最低3日掛かるので、容器一杯にするには10日近くかかります。そしてそれを食糧倉庫におき熟成させます。今、倉庫には300kg近くの味噌が眠ってい ます。これは物々交換でクルミや果物、穀物などに変わります。
味噌つくりは喜んでくれる人の笑顔が浮かび楽しいです。そして時間をかけて発酵熟成することで、私のいい加減さや雑さを補なってくれるので美味しく出来 るのだと思います。
味噌つくりに取り組む時の気持ちで毎日の料理を作れば、同じ材料を使っても、きっと今より格段と美味しいものが作れるはずなんですが・・・。
そうそう私は自分が料理下手な分、人様の手料理はいつも美味しいと感激しています。
我が家で宿泊される方、どうぞどんどん手料理作って下さい。ただし、我が家には味噌、塩、胡椒、砂糖、酢などの基本調味料しかありませんので、こだわり の隠し味はご持参下さい。