時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「納豆食べたーい」

今アルゼンチンで、インフレとか経済危機とか、言葉だけでなく身にこたえ実感する毎日を送っています。今までだっていろいろありましたが、現在ほど 厳しいと感じた時期はありません。
日本語教室も生徒さんが集まらず開店休業状態、つまり失業してしまいました。
でも実益もない日本語を月謝を払ってまで勉強するゆとりのある人が居ないのも分かります。私だって折角始めた合気道を続けられなくなったし、時々楽しんでいたワインもしばらく飲んでいません。
「まいったなあ」
と思う気持ちもありますが、実はあまり悲観もしていません。これからどうなるか?という予測もつかない先の楽しみや、どうしていこうか?という自 分への期待がまだあるからです。そしてこの苦しい時期をどう乗り切っていこうかと日々の暮らしの中で工夫していく面白さもあります。

日本では当たり前だけど、ここには無い物はたくさんあります。無理な物は諦めますが、自分で出来る限り作りだす努力をしてき ました。お風呂も作りまた。
焼き物を始めた動機も和食器が欲しかったからです。食べたいから味噌や豆腐も作りました。味噌の為に麹つくりから始 めたら、どぶろくや甘酒、塩麹、味噌麹も自分で作るようになりました。
私は努力するより諦めてしまう性格なので、まだまだ創意工夫、創造力が足りないと指摘されますし、実はその通りだと思っています。でも一つだけ諦めきれない事があります。
それは「納豆」です。
箸が動かなくなるくらいかき回し、ねばねばねばねばと切れない糸を引く納豆がどうしても食べたいのです。
先輩移住者の方は偉大です。納豆菌が無くても稲わらが無くても、トウモロコシの皮や米のずた袋などから納豆を作ってきました。私も一度だけトウモ ロコシの皮で挑戦してみましたが、見事に豆が腐りました。でもそれで諦める気になれず、納豆菌を手に入れ再挑戦しました。
あれから何カ月・・・いえいえ、初挑戦から数えると何年かかっているでしょうか。最近では検索という便利な物もあります。町に行く度検索で失敗しない納豆の作り方も勉強しました。
でも、未だにねばねば納豆が食べられません。
匂いは納豆です。出来たては少しだけ糸を引きます。でも日本で食べたあの納豆には程遠いのです。大豆の違いもあるでしょうが、ブエノスアイレスや ネウケンではアルゼンチン産大豆で見事な納豆を作っておられる方も居ます。だから大豆の所為には出来ません。
普段の私からしたら信じられないくらいの継続力で納豆作りに挑戦しています。
大豆は我が家では気温や土壌の関係から収穫できません。ですから最 終目標は自家採取のグリンピースかソラマメでねばねば納豆を作る事です。
いつか「のうじょう真人特製ソラマメ納豆」が、お客さんの食卓を飾る日が来る事を夢見て挑戦し続けます。

今回は本文には関係ないですが、私の大切な家族の写真です。猫は左から福11歳、福結び(びんちゃん)9歳、たみちゃん8歳。
犬は左から伏姫5歳、お豆2歳、パク10歳です。