時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「触らぬ神に祟り無し」

アルゼンチンは面白い国です。他のラテン国と比べても、かなり雰囲気が違います。この国に居て感動する事は沢山あります。でも、理不尽な怒りや不快感で頭の線が切れそうになることも度々あります。

アルゼンチンが好きで、パタゴニアが好きで、南米が好きで、と旅行する方々にはそんな不愉快な思いをすることなく、楽しい思い出を沢山作って感動して日本に帰って頂きたいです。その為に老婆心ながら、今回はなるべく嫌な思いをせずにすむコツをお知らせしようと思います。でも、これはあくまで偏屈移住者おばさんの独断と偏見ですのでお間違えのないように。

アルゼンチンは一見すると親日家の国のようですが、実は日本(東洋)大嫌いという方も結構居るのです。何故嫌いか?と言うと、ただ単に生理的にダメという理由が多いのです。ですから、お店や乗り物の中などで不愉快な思いをしても、それは仕方ないと諦めて下さい。蛙が生理的に嫌いな人に、蛙のかわいらしさを分かってもらおうと蛙を近づけても嫌悪感を増すのと同じだと思うのです。そういう時は「触らぬ神に祟り無し」に限ります。

またアルゼンチンはストがとても多いです。飛行機や長距離バスの突然のストに遭ったら、これはもう諦めてひたすら待つか、別の方法を探すしかありません。ストをしている人達に文句を言ってはいけません。返って嫌な思いをする事になります。ストと平行して道路閉鎖もあります。これは幹線道路や主要道路を封鎖して通行止めにしてしまうのです。正直これは非常に迷惑です。でもやはり、文句を言ってはいけません。なぜなら道路閉鎖をしている人達は、どれだけ一般の人に迷惑を掛けたかが重要なので、文句を言えば言うほど相手の思うつぼなのです。また文句を言って相手を怒らせ、乗っていた車をぼこぼこにされてしまった人もいるので危険も伴います。この場合もやはり「触らぬ神に祟り無し」です。

私が思うにこの国で最強、つまり一番大切にされ、何をしても許される人種は「妊婦」。例えあなたが疲れていても、具合が悪くても妊婦さんには絶対席や道、順番を譲りましょう。次が「子供を連れた女性」です。可愛いからと見知らぬ子供に話しかけるのは注意が必要です。下手をすると猥褻罪で訴えられます。これは特に男性は気を付けてくださいね。

また子供には大変甘い国です。公共の場でうるさく騒ぐのは子供の特権です。決して注意してはいけません。自分の近くで子供が勝手に転んでも、恨まれる事がある位です。子供が苦手の私にはやはり、「触らぬ神に祟り無し」です。

アルゼンチン人に物を貸す時は、あげるつもりで貸した方が無難です。乱暴に扱って壊してしまったり、無くしてしまったりは良くあります。相手に全く悪気が無いだけ厄介です。

最後に、何かのハプニングで大変不愉快な思いをした時でも、決して怒ってはいけません。あなたの持つ「常識」は通用しません。喧嘩になれば時間とエネルギーの無駄で、不快感も倍増です。もしあなたが女性ならラッキーです。文句を言いたくてもこらえ、ひたすら「泣いて」下さい。ただただひたすらしおらしく泣き続けて下さい。「泣く女」は「妊婦」「子供」に次いで強い人種です。事態が悪くなることは絶対にありません。

男性の場合は・・・???やっぱり「触らぬ神に祟り無し」で問題に近づかない事が一番でしょうか?そして嫌な事は早く忘れ、後に引きずらない事です。


アルゼンチンは広い国です。習慣も価値観も日本とは違います。例え不愉快な思いをしても、それを吹き飛ばす位素敵で感動的な人との出会い、自然との遭遇があります。それは間違いありません。

あなたの「感動」が増え続ける旅で有ることを祈っています。