時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

セマナサンタ

セマナサンタ  日本ではまだあまり馴染みがないですが、復活祭とかイースターとか言うのでしょうか?キリスト復活を祝う日です。

 

移住したての約30年前、エルボルソンは山間の鄙びた静かな村でした。

光都市バリローチェ間は約130kmありますが、当時は舗装道路もなく対向車とすれ違うのも怖いくらいの狭いガタガタ山道が続いていました。

2時間半以上かかった道も今は国道が完備し、渋滞のある夏の観光シーズンを避ければ1時間あれば行けるほど近い隣町になりました。

またエルボルソンの街も、舗装道路は少なく、信号もなく、大きなスーパーもありませんでした。馬に乗った人や牛車もいました。

その古き良き時代?には、このセマナサンタの週は肉屋から肉が消え、魚を売っていました。初めての年、肉食の国アルゼンチンで肉を売らないと言う日があることにひどく驚きました。

のどかな田舎町では、宗教的習慣が残っていたのです。

家庭では何日も前から卵の中身を抜き、代わりに甘くしたピーナッツを入れて閉じ外側に色をつけたり模様を描いたり、ロスカと言う大きなドーナツ型のフルーツケーキを作ったりしていました。

 

今では肉屋から肉がなくなる事はありませんし、スーパーやお菓子屋には卵型やウサギ型のチョコレートやロスカが綺麗に包装され売っていて、手作りする人もほとんどいません。

セマナサンタは夏の観光シーズン最後の掻き入れ時です。日本と違い、セマナサンタの三日間は祝日です。昔のような宗教的雰囲気はなくなり、すっかり商業的行事に変わりました。

 

私にとっては車と観光客の多い街が静かになる最後の祝日という事で、毎年ホッとした気持ちになります。

 

パタゴニアは綺麗な秋を迎えています。今年は山の紅葉が例年より少し早く、鮮やかな気がします。山は南極ブナが紅く染まり、里は防風林として植えられているポプラが黄金色に輝きます。風が吹くたび葉が舞い落ちて、朝と夕方では景色が変わってしまうほど変化が早いです。

 

また今年もアンデスの山の紅葉を見る事ができた。

農場に舞い落ちた黄葉の葉をカサカサ踏んで歩く事ができた。

パタゴニアの季節の移り変わりの中に、私も参加できた。

 

今ここにいる自分を少し不思議に感じます。そしてそれ以上に今ここにいられる自分を幸せだと感謝しています。

 

 

 

 

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街の景色

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街のもみじ