時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「エルボルソン のカベサ・デル・インディオ」

nojomallin2007-10-21

私達が引っ越し て来た頃、エルボルソンは小さなのどかな田舎町でしたが、一応観光地ということで、町の雑貨屋さんには絵はがきなどが売っていました。

偶然辿り着き住 み始めたエルボルソンなので何も知らず、それらの絵はがきを眺めては

「へ〜。こんな 場所があるんだ。いつか行ってみようね。」

などと話してい ました。そして一番最初に行ったのが「Cabeza del Indio(インディオ顔の岩)」でした。それは町の中心から東6kmの丘の上 にあり歩いて行くことも出来ますが、岩のかなり近くまで車で行くことも出来ます。広場の様な所に車を止めて、そこから林の中の僅かに遊歩道だとわかる細い 小道を登っていきました。結構急な坂を20分ほど登ると突然視界が開け岩場に出ました。その岩場の下を歩く様に なっているのですが、人一人がやっと歩けるくらいの細さで反対は崖っぷちになっていて、もし雨でも降っていたり、目眩なんかがしてふらふらとなったら、速 攻滑って落ちていってしまいそうでした。勿論手すりも何もありません。恐がりの私は一瞬進むのをためらった位です。

そうしてヒヤヒ ヤしながらゆっくり歩いていくと、落書きのような赤いマークと「ここで振り返れ」という表示があったのです。言われるままに落ちないように気を付けながら 振り返ると、私がいま通ってきた道の上にかぶさるようにしてありました。人の顔の様な岩が。

「ああ、これか あ・・・」

正直言ってその 岩自体にはそれ程の感動はありませんでした。でも、ここに辿り着くまでの行程が私には大感動だったのです。

日本じゃあ絶対 考えられない様な“危険?”な遊歩道。もし本当に落ちたら大事故間違いなしの急な岩場。まわりに人家も無いから助けを当てにも出来ません。落ちたらそれは 自己責任。何でもかんでも整備して人工的に作り替えてしまう観光地が多いなかで、この遊歩道はとても気に入りました。

数年前からアル ゼンチンは空前の観光ブームとなり、エルボルソンも夏には国内外から多くの観光客がやって来るようになりました。このカベサデルインディオもエルボルソン の観光目玉として大きく変わりました。先ず入場料を払わなければ入れません。遊歩道は林を切り開き周遊歩道に変わり、手すりも付きました。恐々振り返った 岩場には物見台が出来、ベンチまであります。これが良いのか悪いのか私には分かりません。でもギリギリセーフで観光地化される前の、のどかなエルボルソン を知れた事は幸運だったと思っています。観光シーズンのクリスマスから3月までは人でごった返していますが、10,11月と4月はお薦め シーズンです。特に秋の4月は紅葉も見事です。そしてここは以前もっと木が生い茂り、細く手すり もなかった道だったと思い描きながら歩いてみて下さい。きっと私の感じた興奮と緊張を少しは分かち合えると思うのです。