時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「エルマイテンの蒸気機関車」

nojomallin2007-10-08

エルボルソンから東へ約60kmの所にエルマイテンと言う町があります。

マイテンとはパタゴニア自生の常緑樹で「守り神の木」と言われ、この木の生える所には地下水があるとも言われます。冬でも青々と葉を茂らせていて牛や馬が好んで食べま す。山火事で焼けて丸裸の山にこのマイテンだけがぽつりぽつりと生き残っているのを見て、「守り神の木」とか「地下水がある」と言う言い伝えを実感しまし た。

さて、こんな素敵な名前を持つ町ですが、残念ながら乾燥地にある荒涼とした雰囲気の小さな町です。この町が有名なのは「蒸気機関車」が走っているからです。以前は住民の 貴重な交通手段だったのですが、今では観光用に夏の間だけ走っています。日本でもテレビ放送されたのでご存知の方もいるかもしれません。

パタゴニアに移住してからこの機関車の事は聞いて知っていましたが、わざわざ観光シーズンに埃まみれ人まみれになって見に行く気にはなれませんでした。それが2年前からは夏 から秋にかけて何度も訪れるお馴染みの町となりました。それはこの町に住む鉱物専門の先生と知り合いになれ、それがきっかけでこの町から更に奥の乾燥地帯 に石、カオリン、粘土、砂など「焼き物用」の自然材料を探しに行くようになったからです。

でもきっかけはどうであれ、ずっと敬遠していたエルマイテンの町がとても身近になったのは不思議な縁です。そして全く興味の無かった蒸気機関車も、一度は乗ってみようと思うようになりました。何故かと言うと、エルマイテンから150km程先の線路の為掘り下げた場所に珪藻土らしき層を見つけたからです。道路と平行して線路が走っているのは僅かです。車では行けない場所で、ひょっとしたらもっと別の面白い露頭を見つけられるかもしれません。でも、ぼけっとしている私では「わあ!羊の群だ!」「地平線が見える〜」と観光客化してしまいそうですが・・・。

汽車に揺られな がら荒涼としたパタゴニアの風景を眺めるのも良いですが、禿げ山の土(粘土)の色、転がっている石、線路脇の露頭、そんな所に目を向けて見たら、また別のパタゴニアを感じられるかもしれません。