時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「寒波の贈り物を受け取って」

nojomallin2007-07-23

南半球のアルゼンチンは今、冬真っ盛り。地球規模の異常気象で、暖冬だったり雪が多かったりと予測もつかない冬を毎年迎えています。

今冬はここ数年の暖冬から一転、寒さの厳しい冬を過ごしています。ただ雨や雪が少なく乾燥気味で、今から夏の干魃が思いやられます。

寒いと言っても、若い頃過ごした日本の道東の冬の方が、気候的には数倍厳いと感じます。

ただ、「掘っ建て」式建築のこちらでは、居住環境はとても厳しいものがあります。例えば、地面を掘り下げ、そこにコンクリートを流し込んで家を建て軒もほとんどないので、雨が直接壁に吹きつけ、床から壁から湿気を吸って寒さが倍増します。また、寒冷地なのに水道などに水抜き設備がなく、うっかりしていると水道管が凍って割れてしまいます。

今年は室内薪ストーブを作り替えたのですが、大きく作りすぎた事や、諸事情で暖房用の薪の準備が十分出来無かったこともあり思ったほど部屋が暖まりません。火の気のない陶芸部屋や洗濯場では、室内であるにも関わらずバケツの水が凍りずっと溶けません。

それでも私はここの冬がとても好きです。雪や強風で停電になっても、どこもかしこもカチコチに凍ってしまっても、あかぎれ霜焼けになっても冬が好きです。

特に今冬は朝、大きな楽しみがあります。それは、凍りついた窓ガラスを見ることです。雨戸もないので、寒い夜はガラスが凍りつくのです。その模様の美しいこと。

当たり前ですが、同じ模様は何処にもありません。日が当たったら溶けてしまうその時だけの美しさなのです。

私は芸術が分からないので、どんなに有名な美術館へ行っても、入賞した芸術作品を見ても、今まで心が震えるような感動に殆ど出会っていません。でも、ここパタゴニアの田舎の片隅で出会った、凍った窓ガラスの美しさには涙が出るほど感動するのです。

私には何よりも嬉しい楽しい、寒波の贈り物です。