時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「根を深く伸ばして」

nojomallin2007-05-28

「根を深く伸ばして」

毎年新年に姉がカレンダーを送って来てくれます。日本のカレンダーは写真が綺 麗で友達へのプレゼントにもなるし、窯焚き日に大切な「大安」も分かるので、とて も嬉しい贈り物です。
今年は相田みつを氏のカレンダーがありました。一ヶ月毎の贅沢なカレンダーで 相田氏の書詩が載っています。写真は4月のもの。私の大好きな言葉です。でも、一 番感動したのは2月の「道」という詩でした。


長い人生にはなあ

どんなに避けようとしても どうしても通らなければならぬ道というものがある んだな

そんなときはその道を 黙って歩くことだな

愚痴や弱音を吐かないでな

黙って歩くんだよ ただ黙って

涙なんか見せちゃあダメだぜ

そしてなあ

そのときなんだよ 人間としての いのちの根がふかくなるのは     みつを


これを読んだ時「ああ、そうなんだよなあ、黙って歩かなきゃあ意味がないんだ よなあ、いのちの根が深くなるって、なんて良い言葉なんだろう。」と感動したので す。そして、辛い時にぐちぐち文句や嫌みを言っている自分を大いに反省しました。

その日の夕方、恒例の犬達との散歩をしている時、シプレス林の脇に育っている ミズナラ達の小さな木を見て「ドーン」と心を叩かれた様な気がしました。義父の播 いていった8000本のミズナラは、場所によっては5mにも成長した物もありますが、こ このシプレス林の木々は一日中日陰で毎年冬に野ウサギに食べられ、ほとんどがまだ 30cm位にしかなっていないのです。

毎年野ウサギに食べられてしまう度「それでも、根は普通の木よりも何倍も大き く張っているんだろうなあ、凄いなあ」と思っていたのです。でも私は十年もそのミ ズナラの姿を見て感動してきたのに、相田氏の詩を読むまで、それを自分の姿と重ね て反省する事がなかったのです。

ミズナラ達は愚痴も弱音も吐かず、決して枯れることなく毎春新芽を出し、秋に は小さな葉を黄葉させているのです。ミズナラ達のいのちの根はとてもとても深いの です。私はそんなミズナラ達に囲まれて暮らしているのに、言葉として書かれたもの を読むまで、その本当の意味に気づかなかったのです。

自然や動物達はいつも私を励まし、元気づけ感動させてくれます。でも、私は彼 らに甘え与えられるだけだったのです。そこから自分も学び成長していかなければい けなかったのです。文句や弱音ばかり吐いている自分がとても恥ずかしくなりまし た。

私の人間としてのいのちの根は、まだまだ浅いようです。

 
以上