時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「くりかえす季節」

1月に藪の中に咲くブラックベリーの花を見つけました。勿論野生です。街では日当たりの良い道の脇には大きな株になって育っていて、花も実も大きいです。
でも我が家は日陰で寒いので大株はありませんし、数も少ないです。それでも新しい家の西の斜面に少しずつ増えてきています。昨年は実も甘く大きく、摘んでジャムにするほどはありませんでしたが、満足するまで食べる事ができました。
今年は花にも勢いがなく、実も小さく、殆どが熟す前に寒さが来てしまいました。

此処に住み始めた頃は、ブラックベリーの存在に気がつきませんでした。それがどういうきっかけでか最近少しずつ増えて目立つようになってきました。
大きな棘がありますが、ローズヒップと違い毒がなく、小さい棘が皮膚に入り込んでズキズキ痛むなんて事もないので助かります。

花の時期に「ああ、今年も咲いたんだな」と感動し、今「あの花がこうして実を結んだんだな」とまた感動しています。そして時の流れを感じています。

私は人に感動や喜びを与えてもらいますが、同時に心を傷つけられ、虚しさや悔しさも感じてしまいます。どうしようもない虚しさ、悔しさのやりきれない思いの時、自然や生き物を見つめると、その力強さ、優しさ、温かさに心を打たれ、駆け引きのない素直さに元気をもらえます。

今年は花も実も小さかったですが、「そういう時もあるよ。でもそれが何んなの?私の価値はそんな事で決められるの?今年も新しい空やお日様や雨や虫達に出会えて楽しかったよ。それで良いじゃない。」と教えてもらいました。

そうだね。人からどう評価されても、今ある事を素直に受け入れていれば良いんだね。
私を冷たく弾き返す世界もあれば、温かく迎えてくれる世界もあります。そして私を認め、私を温かいと感じてくれる世界もあるはずなのです。

繰り返す季節の中で思います。
今此処にいる事の有り難さ。美しさ。

命というのは本当に素晴らしいと思います。



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