時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「不思議な水たまりを見つけて」

nojomallin2007-01-22

夜の11時頃まで明るい夏のこの時期を利用して、家から約250kmの距離にあ るチリ国境近くの友人宅に、日帰りで行って来ました。
湖沿いに進む道は車も少 なく、綺麗な風景で快適なドライブでしたが、突然夫が「あっ!」と声を出しまし た。何事かと驚く私に
「今見た?凄い色の水たまりがあったぞ。多分、相当鉄分 が含まれている池が干上がり始めているんだ。釉薬に使えるかもよ。ちぇ!後続車が なきゃあ止まったのに・・・。絶対帰りに寄ろう。」と名残惜しそうに言いました。
車を運転していても、景色を楽しむより、焼き物に利用出来そうな石や粘土を見 つける為、土や山、川の色を気にしている夫は、湖と道路の間にあった小さな水たま りを見逃しませんでした。
「全然気が付かなかったけど、そんなに凄い色だった の?」
「ほんの一瞬しか見えなかったけど、鮮やかなオレンジ色に見えた。」
「ふーん」
けれども、始めて行く友人宅にわくわくしていた私は、それっき りその事は忘れてしまいました。お昼をご馳走になり、会話も弾み、あっと言う間に 時間は過ぎ、私達はまた来た道を家に向かって走り出しました。
今日一日の事を あれこれ思い出し話していたのに、夫が突然会話を中止して車を路肩に寄せ止まりま した。
「どうしたの?」
「ここだ。ほらあそこ。」
前方を見ると、毒々 しいほどの鮮やかな色の水たまりが目に入りました。
「近くで見ると凄い色だな あ。」
今朝一瞬垣間見た水たまりを夫は忘れてはいなかったのです。私達は早速 車を降り、近づいてみました。ところが、降りてみると、周りには異様な臭いが立ち こめているのです。側に行く間でもなく、その水たまりが自然のものでは無いことは 分かりました。食用油が古くなって酸化した様なむっとする臭いで、水たまりでは無 く、どろどろしたヘドロの様なものが貯まっていました。そして道路からここまで、 ハッキリと大型トラックの轍が続いていました。
「酷いことするなあ!」
ど う見ても、トラックがわざわざここに不要となったこの液体を捨てていったとしか思 えませんでした。周りに人家は無く、道路からも殆ど気付かない場所です。分からな きゃあいいや!とでも思って捨てて行ったのでしょうか?それとも、誰にも迷惑掛け ない場所だから、ごく自然に当たり前の事としてここに置いていったのでしょうか?
私を含めて人間はろくな事をしないと、情けない気持ちがしました。
可憐に 花を咲かせていているエニシダがとても可哀相でした。