時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

アンデスの山

nojomallin2006-04-27

秋も深まり、山も里も見事に紅葉しています。
年が明けてから、個人的に落ち込む事が多くあり、悲しい別れも続きました。私の嫌な性格で、被害者妄想がどんどん広がり、ますます気持ちが暗く沈んでいました。そんな時、日本から一ヶ月の予定でホームスティの女性を受け入れ、彼女を案内して、久しぶりに山や湖、川や滝に行きました。4月初旬はまだ紅葉も始まったばかりでしたが、今では山は真っ赤に、里は黄金色に染まり、風が吹く度に色鮮やかな葉が舞い落ちる様になりました。
そして、15日の快晴の一日、6年振りにエルボルソンで一番高い山、ピルテュリキトロン岳(2280m)に彼女と夫の3人で登閧ワした。私達以外に登山客もおらず、秋晴れの最高の登山日和に恵まれました。紅葉真っ盛りの林を抜け、だらだらと続く高原台地を横切ると、突然瓦礫の急斜面に変わります。一応道しるべはあるものの、自分の判断で自分に合った道を見つけ登って行かなければなりません。健脚の彼女も「本当にみんなここを登るんですか?」と不思議がる程の岩場です。30分くらい岩と格闘して、やっと山頂に辿り着きました。
「ああ・・・」
彼女も私も声が出ません。真っ青な空、雪を頂き連なるンデス山脈、プエロ湖が蒼く光り、エルボルソンの町が箱庭の様に見渡せます。隣国チリの富士山にそっくりなオソルノ山の頂も見えました。
この山の山頂に立つのはこれが3回目。でも、いつも雲に阻まれ、これほど見事な風景を見たのは初めてでした。
いつものうじょう真人から見上げているペリートモレノ岳やデドゴルド岳が、今は私の目の下にあり、その後にはチリまで続くアンデス山脈が続いています。
山頂の狭い岩場に座り、私達は言葉も無く、飽きることなくその風景を見続けました。
「このアンデスの山達は、ずっと変わること無く、こうして静かに全てを受け入れ包み込んでいるんだ。私の悩みや行き場の無い不安も、結局この自然の中の小さな一点にすぎない。私はこんな深い山に抱かれて、ここで生きさせてもらっている。それで、充分なんだ。」
のうじょう真人に戻ると、いつも見慣れている風景が、いつもと変わらず私達を優しく迎えてくれました。