時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

たま

nojomallin2006-03-20

3月4日、午前10時過ぎ。オス猫「たま」が静かに息を引き取りました。
我が家に来て8年と24日。9歳にも満たない年齢は、寿命と言うのは短すぎる気がします。「野生児“たま”」と呼んでいた位、甘えたり、じゃれたりする事がない猫でした。
マイペースで肝が据わっていて、誰が来ても、何をされても、逃げ隠れせず、知らん顔して力を抜いてされるがままになっていました。けれども、ごろごろ甘える声も聞くことはありませんでした。
若いオス猫に喧嘩を吹っ掛けられ、パンチの一つや二つくらっても、何処吹く風と言う様に悠々として、喧嘩する事も、追われる事も、ましてや追い出す事もしませんでした。
子猫が「たま」の上で暖を取っても、おっぱいを吸っても優しく受け入れていました。
朝起きて、猫ベットの上でぐったりとしている「たま」を見た時、別れを直感しました。数日前から風邪気味でしたが、その朝の姿を見るまでは「たま」が死んでしまう事なんて思いもしませんでした。
最後まで静かで威厳のある猫でした。苦しい筈なのに、声を出したり藻掻いたりする事なく、猫ベットからストーブの前に連れて来た時も、静かに私に身を任せていてくれました。
最後に息を吸った瞬間も、息を吐いた瞬間も、私は気づく事が出来ませんでした。
瞳の中から命の輝きが消えてしまって、少しずつ冷たく重くなって行く体に「たま」の死を認めるしかありませんでした。
「たま」は私に行動で、思いやり、本当の強さ、優しさを教えてくれました。この8年、私は「たま」に本気で怒ったり、笑ったりしてきたんだと、しみじみ感じました。

のうじょう真人の大地に還って行った「たま」
「たま」の眠る大地から、もうすぐ麦が芽を出すでしょう。スモモもきっと育つでしょう。春一番に猫柳が、銀色に光る蕾を膨らませるでしょう。
出会えて良かった。
一緒に暮らせて嬉しかった。
そして、最後の時を私と過ごしてくれて、ありがとう。
本当にありがとう。