時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

のうじょう真人の春の色

堅いつぼみだった水仙の、最初の一つが花開くと、後は先を争う様にあちこちで黄色の花が咲き始めます。黄色と言えば、トホの花もミチャイの花も満開、気の早いたんぽぽも日溜まりで咲いています。家の裏のすももは白いかわいい花をいっぱいつけ、蜜蜂を誘っています。
シプレス林の中では、明るい緑の野生ランの株が日に日に大きくなり、ルピーノの深緑の株は枯れ草を持ち上げ、ニレの新芽は柔らかな黄緑色で朝日に光ります。
冬には無かった「色」が、のうじょう真人を彩り「春」の気配を感じます。そして、ポプラの新芽が出て木が深紅に燃え、マキの葉が深い赤に変わると、私は「春」を実感します。
常緑広葉樹、自生のマキ(槇ではありません)は春に紅葉する不思議な木です。のうじょう真人にはこの木が多く、最初の3年間はこの時期「木が枯れてきちゃった」と心配し、初夏に葉が再び緑に変わると「よかった〜。生き返った」と喜んでいました。でも、4年目にやっと「この木は春に紅葉するんだ」と気が付いたのです。
そしてもう一つ、防風林としてあちこちにそびえ立つポプラの大木。
新緑は緑と思いこんでいた私は、春、この木が芽を吹き深い紅色に萌えたった姿を初めて見た時、とても感動したのです。
アンデスの谷間から吹く風はまだまだ冷たいけれど、のうじょう真人の植物達は確実に、春の空気を感じているのです。
(植物の名前はこちらで呼ばれているそのままを、片仮名にしたものです。但し、ポプラは日本語です。)