時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「日本祭。バンザイ。」

昨年末、チリのバルディビアにあるアウストラル大学での日本祭にゲストとて行って来ました。ゲストなんて書くと”すごーい”と思われますが、実はその大学 の日本語教師の友人のお蔭で参加させて頂けたのです。有難いことです。
友人がお任せしますと言って下さり、自由に企画する事が出来ました。
20人定員有料とし、1時間半くらいで焼き物と日本料理の関係、箸や食事のマナー、食後のお茶の入れ方、楽しみ方を紹介して、日本料理を箸と 焼き物食器 で会食する事に決めました。
食器は基本的に私達の作品で、献立は用意出来る食器の数や準備する時間、運ぶ手間、予算などを考え炊き込みご飯、鳥の唐揚げ、燻し豆腐、肉なし肉じゃが、 ホウレンソウのおひたしとしました。
テーブルを囲んで和気あいあい食事するイメージでしたが、いざ大学へ行ってみると、会場は講堂の舞台の狭い場所に茣蓙をひいて座って食べると言うなんだか すごい事になっていました。
当日朝、参加者は14名と言われ、20名では多すぎたかなあ・・と不安でしたからほっとしました。

ところでこの日本祭。開催間際に大学の先生の給料値上げ要求ストで大学閉鎖、ギリギリまで開催できるかどうか分かりませんでした。私はもう中止だと諦めて、バスの切符をキャンセルに行くところでした。ところが出発前々日友人から 「たとえ中止でも交通費は出しますから来て下さい」と涙が出る様な嬉しい連絡 があり、結果的にはギリギリ大学側と先生との合意がつき、開催となった訳です。でも開催が危ぶまれていたので、前売りや宣伝が出来ずに、一体どのくらい 人が集まるのか分かりませんでした。

14名なら凄く窮屈だけどなんとか皆座れると、食器や箸を並べて準備をしました。が・・・入って来る人を数えたら、なんと18名もいるではありませんか!4名はどうしても座りきれず、仕方がないから会場の備え付けの椅子に座っ て食事して頂こうとしたら、参加者さんたち、みんな「日本ムード」|になって いて、床に直接正座しているので驚くやら申し訳ないやら・・・。

さてさて食事前に4枚分の原稿の焼き物、日本食、マナーなどの講義をしましたが、もともと田舎のおばはんの私が人様の前で話す、しかもスペイン語で話すということが満足に出来る筈がありませんでした。何度も原稿を読んで練習をして いたのですが、いざ本番となると緊張で声は上ずりしどろもどろ。
サポートについてくれた学生さんと参加者さんの「頑張れ」の応援ムードでなんとか出来ましたが、今思い出しても冷や汗が出ます。

大げさで自己主張の強いアルゼンチン人と違い、チリ人は静かでおとなしい感じがしましたが、それがかえって日本人の私には馴染みやすくとても温かい気持ち になれました。
参加者さんたちが特別なのかもしれませんが、食に対しても好奇心が強く、どれも美味しいと喜んで頂けました。

講習会が終わった後、焼き物コーナーで作品を展示しましたが、参加者の一人が 3回も別々の友人を連れて来て、私達の焼き物と窯焚きに関するこだわりなど 適切に説明してくれ、彼女の心に残るものがあったんだなあと、とても嬉しかっ たです。

反省点ばかりの講習会でした。
もしこれからこの様な機会があれば、参加者さんたちに箸置きとか小皿など、なにか記念品を用意しよう。大皿で皆で食べるよりも、お弁当形式の方が遠慮がなくて良いな、などと思いました。

この講習会とは別に、マンジョウカのでんぷん粉と小麦粉で団子を作り販売しま したが、あっという間に売り切れました。米粉がないので日本の本物の団子は作 れませんでしたが、かなり近いものは出来ました。実はこの団子、アルゼンチン 人には食感が気持ち悪いと不評だったのでどうなるか心配でしたが、少なくともチリでは大好評でした。

日本祭も想像以上に規模が大きく、充実していました。浴衣の着付けを鮮やかに していた、習字で皆に名前を書いていた、将棋や折り紙や日本の伝統遊びや、お化け屋敷まで作っていた人懐こい学生さんたちのエネルギーに感動しました。
首都や他の都市からチリ人のゲストが来て合気道、剣道などの武道の実演もあり、生け花、盆栽、こけし、こいのぼりの展示、そして若者らしくコスプレやアニメコーナーもありました。
日本はもっともっと、日本の伝統文化を大切にしていくべきだと感じました。日 本人である事が嬉しかった心の満たされた一日でした。

こんな素晴らしい貴重な経験をさせて頂き、感謝に堪えません。
誘ってくれ、縁の下の力持ちで惜しみない協力をしてくれた友人。サポートしてくれた学生さん。交通費や宿泊費を援助して下さったチリ日本大使館さま。バル ディビア、アウストラル大学外国語センター、人文学部、日本文化クラブの皆さま。そして私の講習会に参加してくださったチリの皆さま。本当に有難うございました。