時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

私の元気の素

2021年もあと1ヶ月。

吹く風にむわんと熱気を感じることが多くなってきました。

カラカラの夏がやって来ます。

 

我が家には犬が3匹います。2匹はまだ1歳半のいたずら盛りの兄妹。いつも転げ回って遊んでいます。だいぶ落ち着いてきましたが、穴掘りが大好きで、うっかり仕舞い忘れた軍手や手ぬぐいは、決して見逃す事無く見事に噛み千切ってくれます。

そんな彼らが大好きなのは、払った小枝の取り合いです。特に柳の枝がお気に入りです。それは小枝がポキポキ簡単に折れるし、皮もするする剥けるからです。

先日、家の屋根まで枝を伸ばしてしまった柳の整理をしました。もう2匹とも大興奮。

その姿を見て、おもちゃも買ってもらえない、服も着せてもらえない、雨が降ってもカッパも着せてもらえない、トリミングやシャンプーもしてもらえない、市販のフードはほとんど貰えない、肉や骨や野菜をおからと煮たごはんと私が作ったおからクッキーしか貰えない。

下手すると日本の愛犬家から虐待と言われそうな境遇ですが、私は彼らは楽しく生きていると感じました。

自然の中からおもちゃを見つけ、草の上で転げ回って、雨にぬれ、風に吹かれ、太陽の下マルハナバチを追いかける。

本当に必要な物って、自然の中では買ったり探したりしなくてもいつでも身の回りに溢れているんだと気付かせてくれます。そしてそれは色あせる事なくいつまでも輝いているという事にも。

ずっと、私が居なかったらこの子達はどうなるんだろう、と気がかりで旅行にも行けなかったけれど、私が居なくてもこの子達はここで安心して生きていける、この自然が彼らを守ってくれると言う確信が今は持てています。

他と比べる必要はない。今ある自分と自分の大切なものを、ありのままに愛して感謝していけば、心配することなんて何も無いんだと分かりました。

 

国道脇を黄色く染めていたエニシダの花が種に変わり始めています。ポプラの種が風に乗って舞い、雪のように降り積もっています。野茨、ローズヒップの花が咲き始めました。

毎年見事に花開くケシが今年は例年より2週間も早く開花しました。

 

2021年の最後の1ヶ月。

楽しく元気に過ごそうと思います。1日1日がとても早く、とても愛おしいです。

 

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元気、元気

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ケシの花

 

春の香りに包まれて

11月は香りの季節です。

早朝外に出ると玄関横に生えている、つる性の植物の花の甘い香りに包まれます。

日中林を歩くと、野生ランの甘い香りが漂っています。

語彙が少なく、文章力もないので、ただ甘い香りとしか表現出来ないのが悔しいですが、それぞれが独特の香りを持っていて、決して同じではないのです。

幸せの香り。

優しい香り。

心が弾む香り。

この香りの中では、何時も心が軽くなって、大げさですが今ここにいる、ここで生きている幸せを噛みしめることができます。

きっと今が一番花の色で景色が染まる艶やかな季節です。

エニシダが満開です。ルピナスも咲いています。カラファテの小さな丸い黄色い花も、ライラックも、名前も知らないけれど、白や黄色やピンク色の花達もお日様の中で輝いています。

ローズヒップの花も咲き始めました。ケシも大きな蕾が膨らんで来ています。畑の中では種用に残した大根とキャベツの花が風に揺れています。

12月の中頃まで色んな花を楽しむことができます。

観光客が多くやって来る夏は直射日光が強く、乾燥で土煙が舞い上がり、乾いた種がパチパチ弾け、花の少ないカラカラの季節です。

そして再び車と人と騒音が少なくなる頃、紅葉と収穫のほっとする秋がやって来ます。

意地悪ですが、本当の美しい季節が都会人の夏の休暇とぶつからなくって良かったと思います。だってこの美しさを感じたらもっともっと人が増え、自然をコントロールして自分達に都合よく作り変え本来の自然が破壊されてしまう事が多いからです。

 

今年の夏は思い切ってレンガでストーブを作り直すつもりです。

3年近く前に大きな薪ストーブを買いました。大きな薪が入れられるので便利になりましたが、思ったほど家が温まらず、薪の消費もあまり以前と変わらず、そう遠くない将来、薪準備が今ほどできなくなった時のことを考え、出来合いのストーブではなく、我が家に合ったストーブを作り直してもらうことにしました。

レンガのストーブは保温が長持ちし、薪消費も少なくて済みます。当然大きな薪が入れられるよう焚き口と奥行きを大きくしてもらいます。

耐火煉瓦を買い、耐火ガラス付きの扉は特注しなければなりませんが、農場には粘土が豊富にあるし、一番高い人件費は今有るストーブと交換する事が出来たのも決心がついた大きな理由の一つです。

また彼らが作ったストーブをいくつか見に行き、その仕事の丁寧さに感動した事もあります。

 

結構大掛かりな仕事になるので少々不安はありますし、ここはアルゼンチン。予定が急に変わったり、中止になる事も当たり前にありますから、焦らないことにします。

新しいストーブの前で犬や猫達と炎を見つめる自分をのんびりと楽しんで想像しています。

 

 

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食べたくなるような甘い香りです

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今日は雨。ストーブを焚いています

 

自然に自然に

パタゴニアの11月は風の季節。サクランボの花が風で一気に散りました。露天風呂には舞い降りた花びらが一面に浮いて風情があります。

でもお湯を沸かすと花びらは残骸と化してしまうので、花湯を楽しめる訳ではありません。

 

ブエノスアイレスでは10月に35度という高温を記録しました。

パタゴニアでも結局まとまった雨が降らず、山に雪が無く水不足が始まっています。

30年住んでいる人が、井戸が枯れ、春の畑の種まきが出来ないと嘆いていました。我が地区の名前Mallin(マジン)は原住民語で湿地帯という意味だそうです。

20年前までは冬はバケツをぶちまけたような雨が何日も続き、アスファルトもなかったので、ドロドロ道で立ち往生する車も有りましたし、我が家の敷地にもいくつも小川が出来、まさに湿地帯でした。そして夏でも適度の雨があり、万年雪を被った山が輝いていました。

その頃はここが水不足になるなんて想像もできませんでした。

世の中が変わって行くのは当然のことかもしれませんが、特にコロナになってから、いろんな事が大きく変わりました。何があるか分からないと本当に思います。そして方法さえ知っていれば、人って案外簡単に流れに巻き込み誘導する事が出来るんだなと感心しています。

 

それでも時間は変わる事なく過ぎて行きます。

パタゴニアにも春が来ました。花が咲き、緑がどんどん鮮やかに深くなっていきます。

家の前に名前も知らない木が植えてあります。

25年前、友人から小さな苗木を貰い、こんなに大きくなるとは想像もせず、何気なく玄関前の階段の上に植えたものです。

細いですが、今では見上げる程の大木に成長しました。

 

今小さな白い花がいっぱい咲いています。この花はかなり香りがあります。わたしはこの香りでいつも、子供の頃のトイレの芳香剤を思い出してしまいます。

昔の人口的なきつい香りを思い出してしまうなんて、この花にとても失礼な事だと思っていますが。

ただこの時期に木の下を通るのは大好きです。

それは蜜蜂たちが花の蜜を吸いに来ていて、盛大な羽音がしているからです。

私は蜜蜂が大好きです。とても可愛いと思います。

世界的に問題になっていますが、今蜜蜂がどんどん減っています。パタゴニアでも例外ではありません。もう何年も大きな分封を見ていませんし、春先の猫柳に花粉を集めに来ていた蜜蜂もほとんど見なくなりました。

でもこの木の花だけには、毎年沢山の蜜蜂たちが来てくれます。

「よく来てくれたね。」「どこから来たの?」「蜜は沢山ある?」

 

気候変動とか環境汚染とか電磁波とか、ゴミだらけの地球の問題は大き過ぎて、絶望したり見て見ないふりをしたりしているけれど、蜜蜂たちは花の季節には花粉や蜜を集め、文句も言わず絶望もせず一生懸命に生きて、そして人間の犯した罪に中で、黙って滅びていくのです。

 

私にはどんどん住みにくい世界に変わっている気がします。

でも美しく咲く花、飛び回る蜂、伸びていく木や草。

感動や感謝だけを残して潔く去って行く自然の命達のように、私も嫌な感情を後に残す事なく、気持ちよく去っていくために、丁寧に毎日を送っていこうと思い直します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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見えませんが蜜蜂がいっぱい来ています

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今回は甘えん坊で超利己主義の大将君のアップです

 

新しい出会いにワクワクする春

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八重桜と姥桜


10月も半ばを過ぎ、今年もworkaway でボランティアを受け入れる時期になりました。

昨日からペルー人の28歳の女性が来ています。

彼女は2年前からブエノスアイレスの大学に留学していて、去年も我が家に来たいと連絡をくれましたが、既に他のボランティアが決まっていたのでお断りしました。

そしたら今年はまだ募集をしていない9月早々にまた連絡をくれたのです。

本来なら天気の安定している11月から受け入れを開始するのですが、今年は雨が降らず、日中はもう汗ばむほどの陽気となっているので、外仕事には夏より快適な今の方が効率が上がると思いokしました。

私は1週間から10日までの短期受け入れを原則としていますから、既に今年一杯はボランティアの予定が決まっています。

今でも連絡をくれる人、薪小屋増築、畑の柵はり、排水口修理などボランティアとは思えない程の専門的な仕事をしてくれた人、驚くほど役に立たなかった人、わがままで厚かましかった人、明るかった人、哲学的だった人、本当に色々な人に出会いました。

きっとここで1人で暮らしていなかったら出逢うことのなかった人達で、良くも悪くも今までしたことの無い経験が出来ました。

さて、今年はどんな出会いがあるか楽しみです。

 

こうして人を受け入れる事で、ここでの暮らしが好きになって、この農場に私と似たような思いを感じてくれ、動物も植物も全ての命を慈しんでくれて、大切に引き継いで行ってくれる人と出会えるきっかけになると信じています。

 

まだまだ早朝はマイナス近くにまで気温が下がりますが、パタゴニアは春爛漫です。

街の八重桜が満開で見事です。1人で写真を撮っていたら、見知らぬおじさん(私よりも若いでしょうが)が、桜と一緒に写真を撮ってあげる。と声をかけてくれました。

そして「心配だろうから自分の携帯を君に預けておくよ。」と言われました。

でも私には信用できるエネルギーを感じたし、もし彼が盗んで逃げて行っても、大声で叫べば周りが追いかけてくれる安心がありました。(正直それはお勧めできる事ではありませんが)

 

農場では水仙やチューリップは終わろうとしていますがさくらんぼの花が満開です。

朝日が一番に当たる畑の隅のリンゴがもうぽつぽつと咲き始めていました。

いい香りの野生ランもぐんぐん大きくなっています。緑の絨毯の大地にたんぽぽの黄色い花が映えています。

玄関脇のボケの木が大きくなって、花の壁を作ってくれました。それを見た女の子が「ジブリのの千尋みたい」と喜んで通って行きました。

花の季節になったので、ハチドリの砂糖水の給餌はやめましたが、ブルルルと逞しい羽音がボケの花の茂みから聞こえます。

 

人間の世界では戦争があり、環境破壊が進み、あらゆる差別があり、情報操作があり、知れば知るほど息が詰まりそうになります。

でも自然はどんな時でも諦めたりヤケになったりせず、淡々と命を紡いでいきます。その優しさと逞しさに私は背中を押されて進むことができています。

前を向いて笑って進める自分を幸せだと感謝しています。

 

 

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ボケの花の壁

 

春の町を行進する

カレンダーをめくって、「えっ」と声が出ました。

10月になって、今年も後3ヶ月なんだと気づき、時間の流れの速さに改めて驚きました。

 

天気が悪いと薪ストーブを一日中焚いていますし、快晴の早朝はマイナスにまで気温が下がりますが、春は確実にやって来ています。

梅の花は散り、水仙も花の時期を終わろうとしています。

今はボケの花が満開です。もう少ししたらタンポポとチューリプが咲き、さくらんぼの蕾が膨らむでしょう。草たちも緑濃くぐんぐん大きくなっていきます。

春特有の西風が時々大荒れします。屋根が吹っ飛ばなきゃ良いんだけど、と何時もハラハラしています。

 

 先日、生まれて初めてデモに参加しました。

アルゼンチンへ来た当初、都市では度々大きなデモがあり、道路閉鎖されていました。

給料を上げろとか、社会保障をしっかりしろとか、治安維持とか、本当に様々な理由がありました。デモでは必ずと言って良いほど略奪、暴動が起きていました。

幸いボルソンではそれは遠い世界の出来事でニュースで見るだけでしたが、私はいつも、このデモのあり方は間違っていると思っていました。

一番迷惑するのは何の罪もない市民だし、関係のない個人商店が略奪にあっていました。

要求があるのなら、直接本人に行動するべきと言ったら、いかに社会に迷惑をかけ話題になるかが重要だから、市民を巻き込むのが一番効果的だと言われました。

略奪、破壊、迷惑など必要悪を認めていました。

それは今でも納得いきませんが、デモ自体は今の世界の中では必要だと思っています。

 

さて先日参加したデモは、私の住む地区の水源地を含む広大な自然林を20年前に買い取ったイギリス人の大金持ちが、飛行場、デパート付きのカントリーと呼ばれる特別階級の高級住宅地を作ろうとしていることに関しての反対デモでした。

以前からその話はあって、その度に反対デモがあって計画は延期になっていました。

でも今回はかなり現実味を持って再浮上したのです。

救急車を寄贈したり、道路や水路、電線整備をしたり、賄賂を使ったりと様々な裏工作も進んでいました。ですから賛成住民が増えているのも事実です。

 

以前はデモがあったみたいだね、と言う感じでしたが、今回は何人もの友人、知り合いから署名やデモの案内が携帯に入ってきました。当日も「何時に街に行く?私も乗せて行って」と連絡があり、半ば流される様に参加しました。

 

ボルソンの町でこれだけ大規模のデモがあったのは初めてです。

メイン通りで大行進をし、市役所前で大騒ぎをました。でも車の迂回路を用意し、略奪も暴力もありませんでした。

面白かったのは、犬連れで参加している人が多かった事。

それぞれグループがあって、グループごとに踊ったり、歌ったりまるでカーニバルの様でした。

目立つの大好き、騒ぐの大好きの国民性がよく現れていました。

 

今回の行動でどれだけの効果があったかは分かりません。今は延期になっても、裏では確実に計画は進んでいくでしょう。

 

「正しい事」は個人で大きく異なります。それが人間社会です。これだけ人間が増えてしまって、色んな人間の価値が支配していて、地球はもうガタガタだと思います。

そして私も確実にその人間の一人です。

 

自然に学ぼう、自然に還ろうと言うのは、もう不可能な事の様に思います。

なる様になれば良いさと思う事もあります。

でもその度に、「僕は絶対諦めない。だから君も諦めないで」と叫んだ環境活動家の声が心に響きます。

 

私には進んで行動する勇気がありません。自分の主張を声に出す勇気もありません。

でも諦めず、流されず、この私のいる小さな場所で、自然や動物たちから学び続けたいと思っています。

 

 

 

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人が集まり始めています

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踊って叫んで大騒ぎ

 

パタゴニアの女子会

今日は風は強いですが暖かく、薪ストーブをつけていません。ただ老猫「福」には肌寒いようなので、16:00にはストーブをつけてあげようと思います。

来週の21日は春の日。瞬く間に月日が流れていきます。

 

週2回エルボルソンの町に行きますが、この時期は行く度に景色が大きく変わっています。

今は梅の花が満開です。

この木は町のメイン通りの中央分離帯に植えられていて、街を彩っています。

中央分離帯は広く、色んな木や花が植えられています。

今は梅の花。もう少ししたらチューリップ。夏にはルピナスや薔薇が咲きます。

草もこまめに刈っています。

夏はこの中央分離帯に人が寝そべり、マテ茶や地ビールを飲んだり、サンドイッチやエンパナーダなどを頰ばっています。

日本人の感覚からしたら、町の中心のこんな車の多い場所で飲み食いしたり、昼寝をしたりする事に抵抗を感じますが、こちらでは最高に落ち着く場所の様です。

特定の飼い主は居ないけれど、地域の人が餌をあげている地域犬達も、のんびりと昼寝を楽しんでいます。

 

日本語教室を閉鎖してから2年半になります。今のご時世、いろんな制約があって、もう教室を開催する気はなくなりましたが、日本語の先生をする、人と接すると言うことが、自分でも意外なほど楽しくやり甲斐のあるものでした。ですから今は条件の合う範囲で家庭教師を引き受けています。十代の子供の親御さんからの問い合わせがほとんどですが、半年前、同年代の女性から連絡がありました。ブエノスから国内移住してきた人で、日本語ではなくて、習字をしたいと言う希望でした。

私は別に書道の資格を持っているわけではありません。私の時代には(今でもあるんでしょうか?)義務教育で習字の時間が週一回ありました。また小学生の時は習字教室がブームで御多分に洩れず私も通っていました。ただそれだけ。賞を貰ったこともないし、習字は嫌いじゃないけど、夢中になることもありませんでした。

だから指導できることなんて何もないですと正直に話したのですが、ブエノスで6年間習字教室に通っていて、どうしても続けたいから教えて欲しいと頼み込まれました。

責任感のある人ならきっぱりとお断りするのかもしれませんが、勢いに飲まれやすく、何とかなるかな、と深く考えない、いい加減な私は、私にできる範囲で…とお断りして始めました。

唯一の利点は、日本の習字道具と、数年前ブエノスの日本人移住の大先輩から譲っていただいた習字のテキストを持っている事でした。

6年やってきただけあって、自分の筆も硯も墨も持っていて、基本的な筆使いも出来ていました。と言うか、私よりもずっと深く書道を理解していました。

習字をする時間を共有して楽しんでいましたが、彼女、ガビイが仏教に関心があり、般若心経を日本語で唱えられると知りました。

それならと、写経をする事を勧めてみました。私も般若心経をお唱えしたり写経をする事で、心を落ち着ける方法を学びました。悟りを開くとか、ぶれない心を持つには程遠いですが、「嫌だ、悔しい、羨ましい、妬ましい」と思う気持ちより、「嬉しい、有難い、幸せだ」と感謝することの方がずっとずっと多くなりました。

そうして毎回少しづつ写経を始めました。途中からガビイの友人スサーナも教室に参加しました。彼女は習字も漢字も初めてなので、筆の持ち方から始めましたが、とめ、跳ね、はらいなどの基本的な練習を根気よく3ヶ月続け、いまはテキストの最初にあった漢字「大地」を繰り返し練習しています。

ガビイもスサーナも同世代で、週一回ガビイの家で習字教室をし、月一回習字の後に持ち寄りで一緒に食事をしています。

人付き合いが苦手で一人でいる方が好きだったのに、お付き合いで仕方なくではなく、本当楽しんで友人と過ごしている自分に驚いています。

こう言うのを「女子会」って言うのかな?そんな言葉もう古いのかな?

人や動物は、周りの環境や一緒にいる人で、自分に自信を持ち、自分を好きになり、周りを思いやる気持ちが大きく育つのだと実感しています。それは年齢に全然関係なく、いくつになっても育っていくものだと思います。

この歳になっても育ててもらっている私です。でも私でもきっと誰かの心が育つきっかけになることが出来ると信じています。

歳を取るのはしんどい事もあるけれど、面白いことの方がずっと多いと感じています。

 

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教室の様子

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町の春

 

もうすぐ春だよ

暦の上ではまだ冬ですが、暖冬も手伝って、すっかり春の気配です。

木に囲まれた我が農場でも、陽だまりの水仙が花開きました。新記録です。

せっかく積もった山の雪も溶けてしまい、また水不足の心配です。

日中はストーブなしでも良いのですが、来月20歳を迎える猫の福には寒いようで、まだまだ火を消せません。

ほんの数ヶ月前までは、朝私の目覚ましがなると「にゃーにゃー」鳴いて朝ごはんを催促し続けていましたが、今は、私が起き出してストーブの火をつけても丸まって寝ていることが多くなりました。

子供の頃から動物が好きで、いつも白黒で名前もニャン吉という猫を飼っていましたが皆んな早死にでした。母に「あんたが寅年だから、猫を食い殺しているんだ」と、今考えると信じられないような酷い事を言われていましたが、その時は、(そうか、私の所為なんだ。仕方ないか。)と落ち込むこともありませんでした。

ですから福が20歳を迎える事を、心から祝福し感謝したいです。

虎の私に負けないくらい意志の強い猫です。

来る人に「この子来月20歳だよ。」と言うと、誰もが福の色艶の良さに驚きます。歯もほとんど残っています。最近痩せてきて、耳も遠くなってきたけれど、おばあちゃんなんてとても呼べません。

福は私の目標です。私も福のように歳をとりたいです。

 

でも福がどんなに綺麗でもこの先何年も私のそばにいてくれる訳ではありません。そう思うと時々やりきれないほど寂しくなります。

でも覚悟なんてできないし、する必要もないので、今一緒にいる事を大切にしていくだけだと思っています。

 

これからの季節、どんどん緑が濃くなり花が咲いていきます。

街には我が家では寒くて育たない木や花があります。週2回街に行くと春の訪れの早さに目を見張ります。

今はアロモという木の黄色い花が咲いています。この花が大好きです。とても甘い香りがするのです。アロモは私にとっては春の使者です。

日本の春の桜も好きですが、パタゴニアのアロモも大好きです。

私はいつも、なんて素敵な場所に暮らしているんだろう。なんて素敵な人や動物たちに出会えたんだろうと心が膨らみます。

世界には本当に美しい場所が沢山あります。私が知らないだけです。でも比べる必要なんかないので、今生きているこの時、この場所をいつまでも大好きでい続けようと思います。

 

 

 

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アロモの花

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ストーブの前の福