時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「ローズヒップジャム」

パタゴニアの6月は日に日に日照時間が短く、寒さも厳しくなってきます。今では朝8時ではまだ暗く、犬たちとの散歩にも行けません。秋に紅葉で周りを彩っていた木々もすっかり葉を落とし、アンデス山脈も中腹まで雪をかぶりました。少し物寂しい冬の風景です。

観光客でにぎわっていた町も静かになりました。

多くの人が暖かさや現金収入を求めてアルゼンチン北部やブラジル、ヨーロッパに行ってしまいます。けれども、こんなパタゴニアの冬を謳歌しているかに見えるのが「ローズヒップ」です。真っ赤な実は冬の風景を明るいものにしてくれています。自生の植物ではないのですが、この地が余程気に入ったと見え、至る所にはえています。こちらではあまりの繁殖力の強さと、棘の多さから嫌われていますが、お茶やジャムはとても美味しいですし、家庭では無理ですが種から絞るオイルは貴重な輸出品となっています。

さて前回も書きましたが、今年は木苺やプラムなどの果実の収穫が無く、ジャムを殆ど作れませんでしたので、久しぶりにローズヒップジャム作りをしています。きっと他の方や工場では別の方法でジャム作りをしていると思いますが、今回は自己流ローズヒップジャムの作り方をご紹介させて頂きます。

先ず、たわわに実った実の収穫から始めます。簡単そうですが、棘だらけの木からの収穫は予想以上に手間が掛かります。一つ一つ大きく熟れた実を指で取っていきます。収穫した実は額の部分を取り除き、水洗いします。それからひたひたの水で煮てからざるで漉し種を取り除きます。それをゆっくりゆっくり薪ストーブの上で煮詰めていくのです。私は無水なべを使っています。半日煮つめると表面からぷつぷつと泡が出るまでに硬くなります。その時に砂糖を入れます。1・5kgの洗った実に対して800gの砂糖です。(あくまで目分量です)。物価が今ほど高くなかったころはレモンを一個絞って入れていました。

そしてスプーンですくってぽたんぽたんと落ちる硬さまで煮詰まったら、ストーブの上で温めて置いた瓶につめ、熱い内に蓋をします。これで終わりです。

特に煮沸殺菌しなくても十分保存出来ます。

久しぶりに作った所為か、夫には大好評です。私も気に入っています。

木苺やスモモとは違って手間ひまがかかり、大量には作れません。でも市販品とは違った自然の美味しさは保証します。いままでのジャムの様に「我が家のお土産に」と、気軽に持っていって頂く事は出来ませんので、味見したい方は直接我が家で味わって下さい。でも、いつまであるかは分かりませんよ。

ジャムとは別に、毎朝実を収穫してやかんで煮出しお茶として飲んでいます。煮詰めるとビタミンが破壊されるとか、栄養価がどうとかうるさい人もいますが、私たちは先ず「美味しく頂く」事を重視していますので、細かいことは気にしません。

薪ストーブの燃える部屋で、熱いローズヒップ茶を飲み、焼きたてのパンにローズヒップジャムをつけて頂く。これだけで幸せで、私はパタゴニアの冬が大好きなのです。