時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「方言の思い出」

アルゼンチンは広い国ですが、日本の様な方言はほとんどありません。けれども、イントネーションや発音の仕方で何となく地方性は出ます。ただ同じスペイン語でも、各国には独特の発音や言い回しがあり、南米を縦断してきたら、その違いに驚くことでしょう。
我が家にテレビはないのでラジオを聞いていますが、先日ボリビアのアナウンサーが話しているのを、最初はそれがスペイン語だとさえ分かりませんでした。未だにアルゼンチンスペイン語でさえ分からないのですから、他の国のスペイン語が分かる方が不思議なのかもしれませんが……。
さて今回はここパタゴニアのお話でもアルゼンチンのお話でもありません。方言で思い出した私の小学四年生の時のお話です。
私が通った小学校は名古屋近郊にあり、同級生のほとんどは地元出身でした。私はそこで生まれましたが、母が神戸、父が福井と両親は他県出身者でした。子供の時は母の関西弁の影響で、イントネーションが違うとからかわれたりもしました。
四年生の時、国語の授業で「方言」の勉強をしました。日本には方言があって、同じ単語でも意味が違うことがあると言った内容でした。そして、班ごとに方言を調べるという課題が出ました。
クラスのほとんどが地元出身。みんな三河弁の中で育ち、他の地方の方言に接する機会などありません。そんな中で、私は両親が他県出身という異色?の存在。張りきって課題に取り組みました。いつもは目立たない冴えない私も、その時ばかりは、班の中で一種のヒーローでした。
方言一覧表を各班で製作し、いよいよ発表です。今の様にネット検索も無く、市立図書館は遠く、調べるのは学校の図書館だけだったので、みんな同じような内容でした。
けれども私の班だけが、生きた方言を発表する事ができたのです。
詳しいことは覚えていませんし、どうやってその課題のことを母に話したのかも忘れました。ただ私の班の一覧表を見た先生が、
「ほほっ〜。神戸では男の人のことを”おんどりゃ”、女の人のことを”めんどりゃ”って、いうのか。知らなかったなあ。」と感心した様に言い、私も大得意になったことだけは鮮明に覚えています。
スペイン語方言で、先日ふっとその時のことを思い出し、吹き出してしまいました。
「めんどりゃ」「おんどりゃ」って、下町のや○ざ言葉じゃあないのかしら???って思ったのです。
大学を卒業したばかりの若い先生が、知らないことを勉強できて良かったと素直に感心していた姿が思い出され、私の得意満々だったあの時の気持ちが蘇ってきて、「ああ、昔はよかったな。平和だったな。」なんて懐かしい気持ちがしました。
もう40年近く昔の、懐かしい思い出話です。

写真解説


野性の花の回りに見える白い石はこちらでクリスタルデジェソ(cristal de yeso)と呼ばれる石です。
あたり一面にゴロゴロしていて、実に面白い場所です。ここはチュブット州のパッソデルサッポ(Paso del
sapo)から40kmほど更に内陸部に入ったところです。
遠くから見るとキラキラしていて、ガラスでも散らばっているのかと思いましたが、そばに来て見て驚きました。見えている白い石が全てその石だったからです。
ちなみに焼くとどうなると思いますか?「yeso」は石膏なので、想像通り、白い粉になってしまいました。