時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「明けましておめでとうございます。」

可笑しなもので南米で暮らして20年近くにもなるというのに、 未だに真夏のお正月には馴染めません。やはり寒さと、こたつにみかんと、除夜の鐘と、お雑煮でなければ「年が改まった」という気持ちになれないのです。

こちらの年末年始はクリスマスが 最大のイベントとなります。クリスマスイブは家族や友人が集まって盛大なパーティをし、真夜中12時には爆竹を打ち鳴らし大騒ぎをします。これは国民的行事で、25日は国の祝日となっていま す。明け方近くまで騒ぐので、翌日の25日の午前中はみんな寝静まり静かなものです。

私たちはと言うと、この真夜中に 大騒ぎする風習が大嫌いで、いつもこの時期は「雨が降れ」と意地悪なことを祈っているのです。

みんなで集まって楽しく過ごすこ とはとても素敵なことだと思うのですが、爆竹はいただけません。まず動物たちが怖がります。恐怖で行方不明になったり、心臓発作で亡くなったりしてしまう 犬もいるのです。それにこの時期は真夏の乾燥期。火事の心配があります。また病気で寝ている人や、不幸があって悲しんでいる人だっているのです。

と、こんなことを愚痴る事は、このアルゼンチンで暮らす者にとっては失格かもしれません。年一回の最大イベント!楽しまなきゃあ!飲んで食べて歌って騒いで。これこそが南米的クリスマス イブの過ごし方なのでしょう。

私たちも移住当初はこのお祭り騒 ぎに誘われて参加していましたが、家で恐怖に震えている犬たちが可愛そうだし、私はクリスチャンではないし、夜は苦手だし、人の集まるところも苦手だし、 第一、ぜんぜん楽しいと思えなかったので、ここ数年は家で静かにすごすことにしています。

晦日の夜も同じように12時になると爆竹で大騒ぎしま す。この時は、集まった者同士が「新年おめでとう」と頬を重ね合うこちらの挨拶「ベシート」をして祝います。

新年はクリスマスほど思い入れは 無いようで、流石に1日は祝日ですが、2日はもう何時も通りの日常が始まります。

さて、昨年は年末になってノート パソコンを無くしたり、車のラジエーターと風呂用薪釜が壊れたり、大切な仲間、犬の「らくう」と猫の「福ひげ」がほぼ同時に亡くなったりと良くない事が続 きました。ばたばたと続いたので気落ちしましたが、新しい出会いもあったし、感動することも多く、それはそれで思い出深い年になりました。

日本に居たころほど、「年が改 まった」「新年の抱負や希望」という厳かな気持ちはなくなりました。自然の中では毎日が新しい始まりなので、今の私には毎日が元旦なのです。それでもここ はやっぱり日本人らしくご挨拶を。

「謹賀新年

今年も皆様にとって健康で幸多い 年となりますように。

今年もどうぞよろしくお願いしま す。」