時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「花を楽しむ」

パタゴニアを旅行されるなら、個人的に私は11月をお薦めします。
勿論どの季節もどの月も、それぞれの美しさや良さはあり、どれが一番などと比べられ るものではありません。また、旅行される方の目的や興味の対象によっても変わってき ます。
でももし私がパタゴニア旅行するのなら、またはパタゴニア(私の暮らす南緯42°地区) をご案内するのなら、断然11月です。
近年のパタゴニア観光ブームでクリスマスから2月いっぱいは、何処に行っても国内外か らの観光客で溢れ返っています。それは普段「人」を見慣れていない田舎者のわたしに はクラクラと目眩がする程です。当然この時期はあらゆる料金が跳ね上がります。宿も 長距離バスや飛行機も予約で一杯。しかもこの時期を選んでストライキが頻繁に起こり ます。国道も渋滞、事故も増えます。なにより私が辛いのは、干魃と直射日光の強さで す。それでも以前は湿気が無かったので何とか凌げましたが、地球温暖化はここパタゴ ニアに暑さばかりか湿気をもたらした様で、蒸し暑くて汗をかく日が増えました。また 山には虻が大発生します。ですからこの時期に「観光滞在」を希望されると、「観光よ りも農場体験滞在にしましょうよ・・・」などと不遜な事を考えてしまいます。(勿論 ご案内いたしますが)。
また反対に4月からは一気に交通機関の数が減り、長距離移動が不便になります。3月の 紅葉は見事ですが、それが終わると冬支度が始まり、物寂しい風景に変わります。雨も 多くなります。地元民にとっては大干魃の夏が終わり、待望の雨の季節となるのです が、旅行者にとっては冷たい寂しい雨となってしまいます。運が悪いと雨が雪に変わ り、道路閉鎖で足止めの憂き目にあってしまいます。臆病者の私は、路面が凍る季節は 絶対に車を運転しません。私はパタゴニアの冬が大好きですが、それは農場の中で過ご す冬が好きなのであって、旅行となると別問題なのです。
と言うわけで、私はこれからの短い季節が旅行のお薦めなのです。
先ず気候がとても穏やかです。朝夕はまだ肌寒いですが、日中は暑くもなく寒くもな く、パタゴニア特有の風も今の季節はそれ程吹き荒れません。
まだ観光シーズンではないので、人も多くはありません。そうかと言って冬の様な寂し さでもありません。
そして何よりも咲き誇る花々がとても綺麗です。春先の猫柳と水仙に始まり、サクラン ボやスモモ、りんごやカリンの果物の花、見渡す限りのたんぽぽ、ライラック、野生 蘭、野菊、名も知らない木々の花、花、花。
アンデス山脈にはまだ雪が多く、トレッキングでは頂上まで行けない事もありそれが残 念ですが、それでも、私の独断と偏見で「パタゴニアへの旅行は花の11月か紅葉の3月中 旬」をお薦めしています。