時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

「アスール渓谷の吊り橋」

nojomallin2008-01-14

リオアスール(蒼い川)はアンデス山脈からエルボルソンの町の脇を抜け、お隣のチュブット州からチリに続くプエロ湖に流れ込む川です。その名の通り川はとても澄んだ碧い色をしています。エルボルソンでは夏はこの川岸で川遊びをする観光客が多くいます。またマジン(Mallin)地区からはこの川を上流に溯って行く人気のアスール渓谷トレッキングもあります。
渓谷沿いには山小屋が数件あり、日程と体力に合わせて日帰りから3〜4泊のトレッキングが楽しめます。
以前は真夏に涼を求めてこの渓谷を歩きましたが、ここ数年の観光ブームで多くの人が訪れる様になってからは、地元人の特権でのんびりゆったり歩ける観光客の減る秋の紅葉の時期に行くことにしています。
この渓谷トレッキングへはバスがマジン周遊道路までしか通らないので、そこから川までかなり急な坂道を下らなければいけません。「行きはよい良い帰りは恐い」の歌の通り、下りは30分くらいで川岸に着けますが、帰りはこの坂道がかなりしんどいものに感じられます。ですから日帰りでお客様を案内する時は必ず
「いいですか、帰りはこの坂を登らなければいけませんよ!一時間はかかります。必ずこの坂を登れるだけの体力を残して渓谷歩きをして下さいね。」
と脅しの様な事を言ってしまいます。
このトレッキングは山とは違い、川岸を行ったり林の中を進んだりと割と変化に富んでいて、登山の様な辛さも少なく皆が楽しめる為、1月2月は人を見ずに歩く事が出来ないほど多くの観光客が訪れています。特に川を渡るための吊り橋は所々板が抜けていて、一人だけしか渡ることが出来ません。ですから行く人と来る人が交互に一人ずつ渡るため、30分は順番を待たなければ時もあります。
初めてこの吊り橋を見た時は、「うおおお〜。こんな危ない橋わたるの??」と驚きましたが、日本じゃあ絶対お目にかかることも出来ない様な「スリルとサスペンス」の吊り橋に妙に感動と興奮も覚えました。万一落っこちてもそれは自己責任。ですから家族連れなどは橋を渡らず、父親が小さな子供をおぶって、夏でも氷の様に冷たい川の中を横切っていました。(浅瀬を渡れば膝上が濡れる事はありません)
近年の観光地開発でここが一番変わってしまった場所かもしれません。今では可成り奥まで道が出来、山小屋も増え、コースを外れない限り迷うことはありません。自然を楽しみにやって来た都会の人達には便利で安全になった事でしょう。
数年前までは山小屋に物資を運ぶのは人力か馬でしたが、今では夏に4WDで行くことができるのです。
今車が通っている道に生きていた草や木の事を思うと、素直に喜べない気持ちもあります。
便利で安全は大切な事かも知れないけれど、自然の中にはもっと大切な事があるんじゃあないかなあ?と思ってしまうのです。
だからせめてあの「吊り橋」だけは自然を畏怖しない人を川に落としちゃう位の威厳を持って、何時までも変わらずにいて欲しいと私は願っているのです。(慎重に丁寧に渡れば落ちることは先ず有りません)<<エルボルソンから7:00 12:00 18:00にバスが出ていますが月と曜日によって変わります。必ずエルボルソンのサンマルティン通りにある「観光局」で確認して下さい。個人タクシーでは約40ペソ(1米ドル3.13ペソ2008年1月)。
別料金で食事の出来る山小屋が数件あり、宿泊(寝袋持参)も可能です。(山小屋によって違いますが一泊23ペソ位)。
軽装で軽い気持ちで訪れる若者も多いですが、トレッキングの基本装備は必ずして行って下さい。>>