時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

キクイモ

nojomallin2006-07-13

2006/07/13  キクイモ



温暖化はここパタゴニアでも例外ではありません。
久しぶりに「雪の多い、厳しい冬」が来るかと楽しみにしていた私の予想を大きく覆し、気持ち悪いくらい暖かな冬が続いています。でも、この暖冬のお陰で地面が凍結せず、冬の貴重な食料である「キクイモ(トピナンブル)」堀りがとても楽に出来ます。
適期に種を播けば収穫のあった日本での経験から、私はここでも簡単に野菜が出来ると勘違いしていました。確かに毎年大量の有機肥料を畑に入れ、深く耕し、24時間水やりをし、ビニールハウスを作れば、かなりの野菜が自給できます。そして、最初の数年は自給野菜食べたさにそうしていました。でも、福岡先生の「自然農法」を口にしながら、そんな事をしている自分を恥ずかしいと気づきました。
信じた事を実行しなければ、信じていないのと同じだと思ったのです。
勿論収穫は激減しました。トマト、トウモロコシ、かぼちゃなど夏野菜は夏霜にやられたり、やっと花が咲いても、すぐ秋になって寒さで枯れてしまいます。キャベツやほうれん草などの葉物は直ぐ花が咲き、大根も人参も根が太らず、葉を食べる位で収穫せず残し、種採り専用にしています。
野草も山菜も日本とは比べ物にならないくらい少ないです。
でも、もう二度とハウスを作ったり、収穫の為に有機栽培をしようとは思いません。
自給自足の自然農法で生活するのが夢ですが、ここパタゴニアではとても時間がかかることもわかりました。
でも、自然の営みの中で、自然の一部として共に成長して行くことこそ、有機栽培で自給自足の生活をするより意味が有ると今は考えています。
欲しいものを無理して作るより、出来る物を利用し、増やしていけば良いのです。
そういう意味で「キクイモ」は最高の作物です。干魃の夏でも大雪の冬でも、枯れることなく増えていってくれます。
少し癖のある食味で大量には食べられませんが、「味噌漬け」や「きんぴら」焼きいもならぬ「焼きキクイモ」はなかなか絶品です。
そう言えば、今は亡き猫の「たま」はこのキクイモが大好きで、収穫して洗ったキクイモを、よくくわえて持って行っていたなあ、と懐かしい事も思い出しました。