時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

天和

nojomallin2006-06-08

思い出す事が多すぎて、どんな風に表現していいのかまだ分かりません。
4月16日未明、犬の天和(てんほう)が逝ってしまいました。
15日は雲一つない秋晴れのとても綺麗な一日でした。農場中のポプラや果樹が黄金色に染まり、静かな風に輝きながら舞い落ちていました。門から坂を下って、最後のカーブを曲がり家に着く時、最初に見えるマキの灌木の下が天和のお気に入りでした。どこでも自由に行けるのに、いつもそこに居ました。
最後もその場所でした。
農場中、天和が残していった思い出があります。それなのに、もうどこに行っても天和には会えないんだなあ、と思うと寂しくてやり切れません。
別れは幾つになっても、辛くて悲しいです。
でも「ごめんなさい」「許してね」という後悔より、「いつも家を守ってくれて心強かったよ。多くの事を教えてくれてありがとう」「一緒に過ごした時間は本当に楽しかった」「出会えて幸せだった」
そう言う感謝の気持ちの方がずっとずっと大きいです。
16日の早朝、夫が冷たくなっている天和を見つけました。私達は大切な天和の最後を看取ることは出来ませんでした。
でも、天和は大好きだった場所で、マキの灌木に優しく包まれ、土や草の香のする大地に抱きしめられ、満天の星に見守られていたのです。自然はどこまで優しく暖かいのでしょうか。
天和、本当にありがとう。
そして天和を最後まで育み守ってくれたのうじょう真人の自然達もありがとう。
天和が残してくれた思い、教えてくれた多くの事を、これからも大切にしていきます。