時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

nojomallin2006-02-04

私は冬が好きです。特に厳しく長いパタゴニアの冬が好きです。
もともと暑さより寒さの方が体に合っていましたが、観光客で溢れかえり、雑音や車、ゴミが増え、山火事の起こるカラカラのパタゴニアの夏を過ごす内、静かで雨が多い冬が益々好きになりました。
けれども、冬を楽しく過ごす為には、短い夏の間に、家での主燃料となる薪を最低でも15立法メートル(この地区では薪は立方メートルで売買しています。注意していないと、生の薪を掴まされます。買える薪で良い薪はないので、自分達で作ります。)準備し、作陶用の粘土作りと熟成、窯焚き用の松薪作り、果物、野菜の収穫、保存、モスケータやハッカ茶作りと、かなり忙しい毎日です。
薪準備は、立ち枯れの木の枝を払い、チェーンソーで切り、それを担いで家の近くまで運び、ストーブ用に40cmに切り、斧で割り、更に良く乾燥させてから薪小屋に積んでいきます。
粘土作りは、見つけて来た粘土を乾かし、叩いてふるい、水を加えて良く揉み、ビニールにくるんで熟成させます。
収穫期のお茶や豆は、食料用と種用に分け、天日で良く乾燥させます。
今はラズベリー(木イチゴ)の収穫期。あちこちにある半野生化した株から、赤紫に完熟した実を手で摘み取り、ジャム、天然発酵ジュース、シャンパンに加工しています。勿論アイスクリームやケーキに利用したり、その場でポイポイ口に放り込んで(これが一番美味しいのです)自然の恵みを味わいます。
雨が降らなくなったので、贈っていただいた秋田杉の苗達に、水路からバケツで水を運び、一本一本「頑張って」と声を掛けながらの水やりも重要な仕事です。
けれども、そのどれもが結果の見えること、私達にとって欠かすことのできない大切なこと、そして、何よりも楽しんで出来ることなので、辛いとか大変だとは思いません。
夏休みも無く、観光旅行もしないので、「寂しい生活」とか「苦労しているね」とか言われる事もありますが、私達にとっては毎日の暮らしそのものが、楽しみに繋がっているのです。そして、長い冬の間中、温かくストーブの中で燃え続けてくれる薪達に「ありがとう」と心から感謝できる暮らし。それぞれ性格の違う粘土を作陶しながら「面白いなあ」と心から楽しめる暮らし。そういう暮らしが出来ることを、私はとても大切に感じています。