見えないもの
形にならないもの
数字で表せないもの
科学的に証明できないもの
私はそう言うものを大切に思い信じています。特にパタゴニアで暮らしていく中で、世界規模の大きな力での情報操作を感じ、常識とか先入観の恐ろしさを知りました。本当は知らない方が楽だけど、それは幸せじゃないと思っています。勿論人の意見を聞く事、世の中の流れを見る事は重要です。でも判断は自分でしなければなりません。ですから自分の直感や気持ちを磨こうと思っています。
ぶれない心を持つ事はまだまだ出来ませんが、それでも以前よりずっと自分に自信を持てるようになりました。
さて、
引き取った子犬の大将と悟りも8ヶ月を過ぎ大きくなりました。申し訳なかったですが、避妊も去勢も済ませました。
今、物凄く元気エネルギーがあります。個性もはっきりしてきました。少しは落ち着いて私の言う事も聞けるようになりました。
ここに来てくれてありがとう。一緒に生きてくれてありがとう。笑わせてくれてありがとう。元気をくれてありがとう。といつも思います。
先輩のフィナとも仲良く、楽しく暮らしていると思っていました。ところが2月の終わり、突然悟りが居なくなりました。
午前中外で薪準備をしながら一緒に過ごし、お昼に犬達は昼寝をしていたので、私一人で家に入りました。
午後外へ出てみると、悟りだけが居ません。我が家では犬達は繋がれる事なく自由に走り回っています。でも何時も私の側にいて、例え出掛けても直ぐに戻って来ていました。
その時はあまり気にしませんでしたが、夕方になっても帰って来ません。流石に心配になって農場内、いつも悟りと行く場所を名前を呼んで探しましたが見つかりませんでした。
鳴き声もしません。
翌朝薄暗いうちに不安と期待で玄関を開けましたが、やはり悟りだけいませんでした。
その日から不安で泣きそうになりながらも、気持ちを明るく持とう!いい想像だけして信じて待とうと過ごしました。
今までの私ならそうして何時迄も待つだけでしたが、今回は2日目に友人達に悟りの写真を送り、「居なくなって探している、見かけたら知らせて。」とwhatsApp(日本のLINEのようなもの)を送り協力を呼びかけました。
みんなから直ぐに「見かけたら連絡する」「近くを探してみるね」「きっと見つかるよ」と返事をもらいましたが、有力な情報はありませんでした。
翌日「どう?見つかった?」と一人の友人が連絡をくれました。「まだ見つからない。」「それなら私の入っている村のグループにも情報を流して協力を呼びかけてみるよ。」「ありがとう」
藁にもすがる思いでした。
悟りは可愛らしく(親馬鹿ですが) 、人懐こく、誰にでも付いて行ってしまうところがありました。車に乗るのも大好きだったので、迷子と間違われて連れていかれたのかもしれないという思いもありました。どんな情報でも欲しいと思いました。
けれども何の進展もなく一週間が過ぎました。無理して「帰ってくる!」と思い込もうとしましたが、正直諦めてもいました。怪我や病気で帰れなくなったのではなく、いい家族に迎えられたんだと思って自分を慰めていました。
ところが一週間後
夕方家にいると、ガリッと扉を引っ掻く音がしました。家に入りたい時、悟りがする事です。
まさか!
でも他の子が悟りの真似をしただけかもしれない。
ドキドキしながら扉を開けました。
そしてそこに、当たり前のように家に入れろと座っている悟りを見ました。
毛もツヤツヤで、怪我もなく、怖がっている様子も全くありません。
お帰り
大声で言いながらも、目の前の光景が信じられませんでした。有り難くって嬉しくって涙が出ました。ぎゅうと抱くと、悟りの香りと温もりが伝わってきました。
みんなに「帰って来た!奇跡だ。」と連絡をすると、早速「おめでとう、良かったね」と続々と返事が届きました。
そして思いました。
悟りを呼び戻してくれたのは、目には見えないみんなの気持ちだったんだと。諦めて何もしなかったら、きっと悟りは戻ってこなかったんじゃないかと。
子供の頃から、助けてと言うのは恥ずかしい、甘えた事だと思う気持ちがありましたが、そんな事は全然ないのです。苦しい時、困った時にそれを声に出す事は大切な事かもしれません。
何とかしてよ。どうにかしてよ。と人任せにするのは間違いだけど、声に出す事で別の知恵を授けて貰うことや、今回の様に力が集まって事態が好転する事が一杯あると思うのです。
そして私も、誰かの、何かの為の見えない力でありたいと強く思いました。
山火事の多い夏です。やっと大きな山火事が収まったと思ったら、隣町で放火原因の山火事が起きました。7箇所から出火した火は、風向きが変わって市街地を襲いました。
300近い家族が全てを失いました。
友人に直接被害はありませんでしたが、友人の娘さん家族とか、友人の友人が焼け出されました。続々と支援が集まっていますが、失ったものの大きさを感じ言葉がありません。