時子のパタゴニア便り

1994年パタゴニア アンデス山脈の麓の村の5’5ヘクタールの土地に移住。ささやかな自然との暮らしの中で感じた事を書いていきます。

チューリップの教えてくれた事

今年の春は遅くて寒いと思っていたら、10月半ばから一気に夏のような気候に変わりました。

まだ朝夜は0度近くまで気温が下がりますが、日中は20℃近くまで上がり、数字的には快適な気温ですが、直射日光の下では湿気がないのでジリジリと焼けるように暑いです。

雨も降らなくなり、村の周遊道では車が走ると、もうもうと土煙が舞い上がります。

毎年、水仙とボケの花が咲くと春の到来を感じ、それからすもも、さくらんぼの花が咲き、タンポポのかわいい花がそこら中で目立ち始め、チューリップの後リンゴの薄紅の蕾が開き、淡い白い花が咲きます。

ところが今年は、多少早い遅いはありますが、殆ど一気にいろんな花が咲き、農場が賑やかに彩っています。

 

何年も前に畑にしていた場所がありました。

体力的に維持が難しくなってずっと放置していました。倒れた柵にホップの蔓が巻き付き、草が生い茂り、秩序ない小さなジャングルのようでした。

今年、仲間がその倒れた柵を新しい畑に再利用してくれました。ごちゃごちゃしていた畑が、柵がなくなったことで、ほんの少し開けた明るい場所に変わりました。そうしたら、今までは草に埋もれてほとんど目立たなかった、チューリップがググンと大きくなったのです。そして大きな花をいくつも咲かせてくれました。

自然って正直だなと感心しました。「ここは畑。柵で仕切る。」それは私が自分勝手に引いた境界線です。そんな柵の中ではチューリップ達はきっとのびのび育つことが出来なかったのです。

そして思いました。人はこの世界の中心だと勘違いしていて、あらゆる所、あらゆる物に境界線を引きました。それは国境だったり、宗教だったり、人種だったり。

私だってここは私の土地って力んで来たけれど、私の土地じゃなくて、私が生きる事を許して受け入れてくれた場所なだけです。

そう思うと今までイライラしたり、気に入らなかったりしたことが、自分の勝手な思い込み、狭い視野での判断だったと気がつきました。

そうは言っても、私はまだ、自分で作った柵の中でイライラしたり悶々としたりしています。自分を好きになれたけど、自己嫌悪することも度々あります。

そう言うこと全てを受け入れて、自分を認めて、無理しないように少しずつ柵を取り払って、このチューリップ達のように、いつか空に向かって大きく葉を広げ、花を咲かせようと思います。

 

ばーちゃん花なんて見たくないって?

いえいえ天真爛漫な若々しさはなくても、熟成された美しさはあるはずですよ!それを目指します!

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元気に走り回るちびっ子ギャング達